第9話
「これだよこれ」
「わー!美人〜」
「越田くんの妹可愛いね〜、何年生⁉︎」
「越田くんに似てるー」
「いいな〜うちにも欲しい…」
終礼の前、先生が来る前の間。クラスは賑わっており、私もみなみくんに妹の写真を見せてもらっていた。今日仲良くなった凛華・栞菜ちゃん・実咲季ちゃんも一緒に!
「これ、本当にみなみくんの妹…?」
「おいっ、どういう意味だよっ」
「だってだって、こんなに美人な妹さんが…いる…なんて…」
みなみくんの顔をチラチラ見ながら話してると、
「おいー!俺の顔だってイケメンだろうがよ!俺に似てなくて美人だって言いたいのかよ!」
「えへへ、いやでもさ、ねえ」
「うーん、まあ分からなくはないかな〜。都の言ってることも納得はできる笑」
凛華が腕を組んでニヤニヤ。
「クソッ。俺だってイケメンモテモテ野球部だし」
「その坊主が余計にダメなんじゃない?」
「いやダメってなんだよ、オブラートに包めよ」
「あはははは」
この1日でこんなに仲良くなれたなんて、私嬉しすぎる!
「都は?何人きょうだい?」
「私は1人っ子!」
施設に行けばきょうだいみたいな子たちがいっぱいいるけど!
「栞菜は…えーと、お姉ちゃん?だっけ」
「そー。うち、実はお姉ちゃんここの学校で働いてるんだ」
「え⁉︎マジで」
「実咲季は?」
「私は小さい弟がいるよ。今年で年少」
「ちっちゃ〜い!可愛いんだろうなぁ」
写真を見せてもらうと、純粋無垢な笑顔の可愛い幼稚園児だった。3歳かぁ…。うちの芽生ちゃんと同じってことか!
「皆んな歳離れてるんだね。凛華は?」
「私?私は1人っ子だよ。都と一緒だね!」
「そうなんだ〜」
きょうだいってちょっと憧れるな〜。
「みなみくんは2人きょうだいだもんねー」
さっき見せてもらった子、ほんと可愛かった〜!
「あ?違うけど…」
「え!まだいるの!」
まさかの妹2人⁉︎
「兄貴が2つ上にいるし」
「まじか」
「えー野球部?お兄さんイケメン?」
「兄貴も野球部だよ。顔は俺と変わらん」
えっ、見たい!みなみくんと瓜二つなお兄さんの顔見てみたい!
「ねー写真どれー?」
見せてもらった写真は家族写真。
「…て、え。ちょっと越田、全然顔違うじゃんか」
「お兄さんイケメンすぎ⁉︎越田の嘘つきー」
「いやいや、俺の扱いひどくね?」
「坊主でこんなイケメンな人、存在するんだ」
「みなみくん、今度皆んなに紹介してよ」
えー?と、しかめっ面なみなみくん。
「ねね、名前なんて言うの」
「越田みなみ」
「知ってるわバカ」
「いやマジで扱いひどいな。あおいだよ」
「あおい先輩ね…。弟よ、よろしくね」
「おいバカ、兄貴には彼女いるっての」
「はぁ⁉︎それを先に言いなさいよね」
皆んなこぞってショックを受けてげんなり。私はそんな皆んなを見て笑いが堪えきれない。
「ちなみに妹さんの名前は?」
「なぎさ」
可愛い!
「なぎさちゃんね!覚えとこ。何年生なの?」
「あーえっと中1だっけな」
「3つ下?中1かぁ。え、可愛い〜!」
「写真は小6ん時のやつだよ」
「大人っぽいね!なぎさちゃん」
なんなら私より大人…。背も高そう!そういえばみなみくんも背高いっけ。
「はーい。終礼しまーす」
「じゃね、バイバイ!」
「都ーっ。都ってどこに住んでるの?」
終礼後、凛華が机に話しに来た。
「私は光が丘の3丁目!」
「じゃあ…御園駅ゆきの電車?」
「そうだね」
「じゃあ私も一緒に帰っていい?あと栞菜も実咲季も!」
3人とも近いんだ!やった!
「みなみくん、バイバイ!」
「おー、俺今日から部活だからじゃあな」
えっ、今日から⁉︎運動部きつい…。スパルタ…。みなみくん張り切っちゃって、偉いな〜。
「ねえ都、光が丘ってことは中学はひかり中?」
「そうだよ。3人はどこ?」
「私はあま中!栞菜も一緒だよ」
凛華と栞菜ちゃんはずっと一緒なんだ!
「私は第一中。塾が2人と同じで、中学のときから仲良かったんだ」
「えー!すごいね」
この高校は
「今度さ、カフェ行ってから帰ろうよ!天川駅にね、こういう──」
見せてもらった写真は、とっても可愛い雰囲気の喫茶店。メニューも映えるものばかりで、とっても美味しそう!
「行きたい!」
…あ。でも…。
『都、積哉!義務教育は終わりだけど、あなたたちは学生であることには変わりないからね。制服で出歩いてたら、補導されたり、犯罪に巻き込まれたりする可能性が高くなるから、早く帰ってきてね。部活に入るのは止めないけど、無断で遊びに出歩いたりはしないこと』
って言われたしな…。
「今日帰ったら行ってもいいか確認するね!」
「うん!私も一応聞かないとなー」
「2人とも親厳しい系?」
うーん…これは厳しいのかなぁ…。
「まあ、一応それなりに厳しく言われてるかな。でも私のために言ってくれてるし」
「いや都いい子すぎ!それじゃあさ、もし許可取れたら連絡してよ。LINE教えて」
LINE、LINEっと…。
「はいっ!」
「おっけー、ありがと!」
おお、凛華はアイコンすら可愛いのか…。その流れで栞菜ちゃん、実咲季ちゃんとも連絡先を交換した。
「みやちゃんのこのアイコン…!もしかして彼氏⁉︎」
実咲季ちゃんが目を輝かせて訊いてくる。
「いやいや!違う違う。私の幼馴染だよ」
私ともう1人の手のシルエットがアイコンだから、勘違いしちゃったみたい。
「あ〜なんだー」
「都に彼氏いたらびっくりするよー」
「彼氏欲しい〜!」
皆んなが一斉に話すから、私はあんまり皆んなの言ってることが分からなかったけど、とりあえず話が盛り上がってるみたいでよかった。
「幼馴染って、この学校?」
「ううん。実はもう働いてるんだ」
咲苗のこと、引かれなきゃいいな…。
「えー!かっこいいね」
「でも大変そう。中卒ってことでしょ?」
「でも、みやちゃんが就職するときにアドバイスとかくれそう」
あーっ確かに‼︎
「あ、そんなこと言ってたらもう駅着いちゃった。じゃあね、都、実咲季!」
「バイバイ!」
凛華と栞菜ちゃんが降りてから、2人になって席に座った。
「みやちゃんは中学では何部だったの?」
「私はねぇ、手芸部だよ!」
よく作ったものを持って帰って、皆んなに喜ばれてはまた一段とレベルアップしたものをルンルンで持って帰っていた。
「すごーい!じゃあ手先器用なんだ」
「えへへ、そんな…」
と頭をぽりぽり掻いていると、私も最寄りに着いた。
「私ここだから、またね!」
「うん!ありがと〜また明日!」
改札口に行くと、そこには積哉がいた。今日1日が濃過ぎて忘れてたけど、同じ学校なんだもんね。そりゃいるか。
…あ。積哉、バスで帰るんだ。私も一緒に帰ろうかな。ダメだ。私自転車で駅まで来てるんだった。
自転車を一生懸命漕いで、つぐみ園まで帰る。自転車を降りて、押しながら歩いていると、小学校から帰ってきた子たちが出迎えてくれた。帰ってからも、園庭で遊んでいるのだ。
「お姉ちゃん、おかえり!あ、お兄ちゃんもいるー」
?と思ってぱっと後ろを振り向くと、積哉もちょうど帰ってきていた。
「ああ、皆んな?ただいま」
「あ、あああせ積哉、先…歩いていいよ」
白杖で歩く人からすれば、目の前のものは“障害物”。杖で巧みに距離感を掴みながら、頑張って避けながら玄関に辿り着かなければいけない。だから、私は積哉を前に行かせたのだ。
勇気を出して言ったものの、いつもほぼ話さないから緊張しちゃった。気まずくて下を向きながら言っちゃったけど、積哉は私の顔が見えていないから少し安心した。
「ああ、ありがと。助かるよ」
積哉は気まずくないのかな…。私はか・な・り、気まずいんですけど⁉︎
積哉、なんか言ってよー‼︎
それは知らない色 花園稔栗 @Mikuri_Hanazono
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