38. おれの居場所に夜はない
「Paradox from June 《6月から来た矛盾》」
うわ、厨二全開なやつ出して来た。矛盾認定は外れていないらしい。
「……も、
矛盾よりは番号の方がまだいいか……。
「じゃあ、決まりだね。
言いながら、タクトは少しだけ歯を見せた。
お? タクトの態度……さっきより少し柔らかくなってないか?
「なんか、嬉しそうだな?」
「……別に」
こちらをチラ見してからまたそっぽを向く。
何なんだ、一体。
それにおれ、自分で
頭の中で整理しようとしたところに、レイが急そいそと料理を運んで来た。
「ジャ〜ン! 完成〜!」
肉じゃが以外に、何品作ってんだ。
サラダは彩り良く、鶏の骨付き肉みたいなのも照りが半端ない。
けどこれ、何人前あるんだ?
なんて見ていたら……。
「ご飯〜」
ふんわりと笑みを浮かべたレイからすっと茶碗が差し出された。
「……おれの?」
こくこくと頷く。
優しく香る肉じゃがに、食べる前から温められた気分がした。
ショースケの側を離れて、タクトも料理のシートに近づいた。
「あんまりショースケに意地悪しちゃダメだよ」
「してない」
不貞腐れた声が追いかける。
◇◇◇
肉の味付け、香り、どこかで食べたような気がした。
タクトは相変わらず仏頂面で、おれの事を意識しているようだった。……急に距離が縮まるもんでもないか。
向かいではレイがニコニコしながらこちらを見てくる。よくわからんが、おれが何か食う度に口元を綻ばせ、自分も箸を進める。
でも、悪い気はしない。
「レイって、凄い楽しそうにメシ食うよな?」
彼女は更に表情を和らげた。
「だって〜、嬉しいんだも〜ん。ショースケがご飯食べてるの」
「ん? メシ?」
レイは部屋の隅で起きそうにないショースケにちらりと視線をやると続ける。
「ちゃんと元気になるんだな〜って」
ああ、レイから見ればおれはショースケの
それに……。
目が合うと、レイは口をモグつかせながら微笑んだ。
なんかホッとする。
ただ……。
「ショースケお代わりいる?」
「え? ああ、おかずが充分あるからいいや」
タクトが一瞬こちらを見る。
レイがおれをショースケって呼ぶ度に、タクトが食う手を一瞬止めるんだよ。
誤解は解けたんじゃないのかよ。
やりづらい……。
が、このままじゃ今夜寝る場所もない。
……よし。
「あのさ……」
レイが、ン? という表情でこちらを見ると、タクトも視線をおれに移した。
「すごい図々しいのはわかってるんだけど、おれ金なくて。しばらくここにいさせてくれないかな」
「っ…………あ」
レイは何か即答しそうな勢いで口を開いたが、タクトの顔色を見てすぐ口を閉した。
あまり効いていないエアコンの音だけが部屋に残った。
タクトはしばらく目を瞑り、考えるように少し唸ると、ゆっくりと目を開いた。
「……これ以上人を増やすのは無理。伯母さんと会ったら説明がつかない」
やっぱダメか。……どうする。……野宿しかないか?
「ねぇタクト。伯母さんには、メガネかけたり髪型変えて変装して、友達って言えば?」
レイが言った。眼鏡……変装。友達。
「部屋が狭いし、夜ショースケが起きてまた騒ぎになったら困る。布団もない」
「布団いらない。風呂場とかでいいから」
ここは食い下がれなかった。追い出されたら、露頭に迷うのが目に見えている。
「ショースケ寝る場所ないの可哀想だよ。タクトなら方法思いつくでしょ。意地悪しないで」
レイが援護してくれてる。ありがたい。
僅かな沈黙があった。
タクトは渋い顔をして少し前髪を掻き回した後、言った。
「……昼間……」
一度溜め息めいたものを吐いてから続ける。
「ボクらがいない時間なら」
……タクトたちがいない時間、って事は……学校行ってる午前中?
「おれ、昼間なら寝に来ていいってこと?」
タクトはこっちを見ず、ゆっくり頷いた。
「伯母さんが急にくることがあるから、変装して」
「する! 変装でもなんでも」
即答した。ここに置いてくれるなら。
するとタクトは急に思いついたように顔をこちらに向けた。
「もう一つ」
「おう、何でも言って」
「現代にある方法でショースケを治したい。情報集めや、力仕事をお願い」
「何か知らんが任せろ」
暖かい布団で眠れるなら、何でもやってやる。
それに、ショースケは、おれもなんとかしてやりたい。
レイが思い出したように言った。
「ねぇタクト、ゴハンもショースケの分作っていいよね。お腹空くと
レイ、天才か?
メシも確保。その場で手を合わせて拝みたくなった。
◇◇◇
食後、おれはタクトとスマホでショースケの症状を調べていた。
「なるほど、夜調べた方法を、おれが朝に跳んで試すのか」
味方になると、タクトの頭の回転は本当に頼りになる。絶対敵に回したくない。
「方法はAIに聞くのが手っ取り早い?」
今のショースケの症状はこんな感じか。
『会話が通じない
寝てても攻撃してくる
ずっと寝てる。
どういう状態?
』
しばらくすると、AIから回答が返って来た。
___________
読むのにお時間を使ってくださりありがとうございます。
前回、今回のお話は、21話では全く噛み合わなかったタクトレイの話の真相になります。
『「自分で言ったくせに」
言ってないし一度も呼ばれてない。』
→自分で言っちゃってましたね。
『その日から度々”落ちて“来ては布団を占領、飯を食って去っていくらしい。
他にもいるのか? ……別のおれが。』
→他にいたわけじゃなく、まんま本人でした。今後しばらくショースケ宅を拠点に、居候生活が始まります。
https://kakuyomu.jp/works/16818792436167174929/episodes/7667601419965317438
主人公と一緒に困惑、ドキドキ、ショースケ、そんなんで治るのか? なんでタクトは塩対応続投? ストーリー展開に正直ついていけん。などなど、ぜひハートで応援。感想や星で声をお聞かせください
貴方の声で、ストーリーが変わることがあるかもしれません。
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