カフェ好き女と天然熊さん

桜川 椿月 (おうせん つばき)

第1話 先輩と後輩

 「熊田!今日中にこの資料を完成させて!」

私はぶっきらぼうに後輩に言い放った。

「はい!了解です!」


 私、田中胡桃。この男は私の直属の後輩、熊田五郎。

180cmはゆうに超えるであろうがっちりとした体格といかつい風貌で、名は体を表すとはまさにこのことだろう。だが、見た目とは裏腹に、細やかな気配りもでき、仕事も早い。とても有能な後輩だ。

   

    〜数時間後〜


「田中さん、こちらの資料でいいでしょうか?」


「できたんだな。お疲れ。今日はもう上がっていい。私が確認しとくから」


「何か私にできることがあれば、教えてください」


「いや、大丈夫。もう帰っていいよ」


彼は少し複雑そうな顔をして、じっと私を見つめた。

「で、でも…」


「それに一人の方がはかどるから」


「分かりました…お疲れ様です。また来週もよろしくお願いします」


「うん、お疲れ様」


私は彼の資料を見ながら、つっけんどんに言い放った。そして、彼が去っていったのを確認して…


「はぁ…なぜ私はこんな意地っ張りな言い方しかできないのか…」

長い長いため息が会社の中に静かに消えていった。


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