『回避型特化』ですが、Sランクダンジョンを攻略します〜
@ikkyu33
プロローグ
――「お前のステータス、戦う気あるのか?」
入学式の日、まだ校庭に春の風が吹き抜けていた頃のことだ。
厳めしい顔をした教官にそう吐き捨てられた言葉は、いまも耳の奥に棘のように残っている。
全ステータスポイントのほとんどを【敏捷】と【回避】に振った結果、俺の攻撃力は初期値のまま。
掲げられた水晶盤に映し出された俺の数値は、誰が見ても「戦闘不能」と笑うしかない内容だった。
その場で湧いた失笑、横目で投げかけられた侮蔑の視線――それらを噛み殺すように、俺は拳を握りしめていた。
俺の【職業】は、スカウト。
その中でも“回避特化型”という、戦闘職としても支援職としても中途半端な立ち位置。
「どっちつかず」――それが、俺に貼られた烙印だった。
クラスメイトたちは違った。
煌びやかな剣を振るい、火力に特化したソードマスターへと覚醒する者。
一度に数十体の魔物を吹き飛ばす範囲魔法を操るメイジ。
彼らは次々と華やかなパーティを組み、初級ダンジョンから勢いよく挑戦していった。
その背中は、俺にとって眩しくもあり、同時に胸を冷たく締め付ける現実でもあった。
「役立たず」――そう呼ばれることに、次第に慣れてしまった。
いや、慣れるしかなかったのだ。
共にダンジョンへ誘われることもなく、酒場での談笑に混ざることもなく、ただ端の席で黙って地図を広げる。
孤独は、気づけば日常に変わっていた。
――だが、それでも。
俺には、ひとつだけ譲れぬ信念があった。
「攻撃が当たらなければ、どうということはない」
それは強がりかもしれない。
だが、身体を研ぎ澄まし、刹那の感覚を頼りに敵の一撃をかわしたとき――
その瞬間だけは確かに、誰よりも生きている実感を覚えるのだ。
だから今日も俺は、誰も寄りつかぬSランクダンジョンの奥地を、ひとり軽やかに駆け抜ける。
仲間はいない。火力もない。
だが――罠を見抜く目はある。敵の一撃をかわす脚はある。ボスの大技を髪一筋の差で抜ける勘がある。
踏み込むたび、己の存在が掻き消える。
振り下ろされた剣は空を切り、迫りくる魔法は影ひとつ残せず霧散する。
その様はやがて“幻影”と呼ばれ、冒険者ギルドの記録に刻まれることになるだろう。
これは――戦わずして勝つ物語。
“最弱”と蔑まれた回避特化の少年が、最難関のダンジョンを攻略し、世界を驚愕させるまでの物語である。
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