第12話 成長

 それからオーラが届かない位置に来ると僕とアリスは、止めていた息を思いっきり吐き出した。


「「ぷはぁーーーーッ!!!」」


 それから僕達は、少し進むと捜索に来ていた先生達と遭遇して保護されると森の奥で見た魔物の事を説明したが、疲れと魔物の恐怖で気が動転していると思われ信じて貰えずに——学校に帰り休んだ後で話は聞くと言い渡された。


 そして、無事に皆んなが待つ学校へと帰還すると皆んなアリスの事を心配して他の生徒達も集まって来た。

 僕の事を心配してくれる人は1人も居なかったが……僕は気にしないふりをした。

 しかし、心ではしっかりと泣いていた。


 そして、少し落ち着いた後で——僕とアリスは先生達に森で見た魔物の事を詳しく伝えると、調査隊が編成されると調べられる事になった。


 そして、僕とアリスは今回の課外授業で色々あった事もあり仲良くなると——。

 ある日の事、アリスに呼び出された僕達はアリスの部屋を訪れるとアリスとバニラが待っていた。

 僕は、アリスに普通に話しかけ——僕とアリスが仲良さげに話しているとバニラは少しつまらない様子だった。

 そして、アリスの魔力の秘密を詳しく聞いた後で——。

 ヤマトとアリスは、僕にアリスが受けた魔力量を上げる方法を試す事を提案するとバニラは少し反対の様子だった。

 しかし、アリスに強くお願いをされるとバニラは泣く泣く承諾をしてくれた。

 そして、乗り気ではないバニラを説得すると僕達は——ある場所に向かう事になった。



 そこは、森深くにあるバニラの故郷のエルフの村——僕達は、そこに来ていた。


 しかし、人間である僕をエルフ達は警戒しているみたいで——バニラとアリスが何とか説得すると僕は村に入れてもらえる事になった。

 一安心した僕は、少し疑問に思った事を聞くと……何故、アリスも人間であるに警戒されてないのかと尋ねると——。

 アリスは、赤ん坊の頃にエルフに拾われるとこの村で育った為にエルフ達は、アリスが人間であっても警戒しないとの事であった。


 そして、話のついた後で——僕は、エルフの村に伝わる秘術——魔力増幅の術式を行い。魔力の注入を行う事になった。

 秘術と言っても簡単な事で、描かれた魔法陣の中で魔力が多い者が少ない者に魔力を大量に流し込むと言うモノで——エルフは、もともと魔力量が多い種族なので、あまり使う事の無い術であり。

 ごく稀に生まれてくる魔力量が低い者に、行う術で、ここ数十年で——この術をつけたのはアリスだけであると言う事も説明してくれた。

 そして、僕が魔法陣に入ると集まったエルフ達が——バニラとアリスに魔法を注入する役を押し付ける。


「お前達が連れてきたのだ。お前達が魔力を注入するのだ!

 バニラは、魔力量が低いがアリスが一緒なら問題なかろう」


 エルフの村長が、そう言うと2人は——。

「「わかりました!」」と、返事をすると魔法陣の中に入り僕の手を握るとアリスとバニラは魔力を流し込み始めた。


 すると、アリスとエルフの莫大な魔力が僕に流れ込んで来る……

 儀式は順調に行っていると思われた。

 その時、突然異変は起きた! アリスとバニラが魔力を流し込んで数分後……


「ちょっと……どう言う事!? 魔力が一向に溜まらない。

 そして、魔力がどんどん吸われて行く……

 ちょっと待て——ッ! やめて——ッ! 本当に、やめて! 誰か止めて——……」


 すると、それを聞いた他のエルフ達が僕からアリスとバニラを引き剥がそうとすると——ッ!!!


「どう言う事だ——ッ! 引き剥がせない。

 しかも、私達の魔力も吸い取られているみたいだ。

 アリス、バニラ……こ、これはいったいどう言う事だ!」


「誰か早く助けて——ッ! バニラの魔力が……魔力が……もう切れてしまう!」


「俺達だって、もう限界だ——!!!」


 そう叫ぶエルフ達……アリスはバニラを思いっきり引っ張ると——。


 ヤマトが叫ぶ!!!

 

「クロウ——ッ!!! 魔力を逆流させろ!」

「分かった!」

 

 僕は、ヤマトのその指示に従った。

 僕は、触れている2人に魔力を流し込むと——アリスとバニラ、エルフ達が弾け飛ぶ様に僕の元から吹っ飛んだ。

 そして、僕から離れた者の中で1番魔力量の低いバニラは魔力切れで倒れる。

 そして、僕は体からは莫大な魔力がオーラとなって溢れ出す。

 それと同時に、体の中に入った莫大な魔力を感じる。


「魔力が溢れ出しオーラとして目に見える!」


 それに、呆気に取られるエルフ達とアリスだがヤマトだけは大興奮で僕の魔力量を計測する。

 それに続く様にエルフ達もステータスを確認すると……


「これだけ高濃度の魔力はエルフでも見た事がない……」


 そして、皆んなが期待して確認した僕の魔力量は【1000】になっていた。


「せ……1000だと…………。

 クソ雑魚が、ただの雑魚になっただけじゃねーかッ!!!」


 その表示を見たヤマトは、怒り出し僕に飛び蹴りをかまして来た。

 その後、ヤマトはガックリと肩を落とすが……アリスが叫ぶ——ッ!!!


「それは、おかしい! バニラと私、それからエルフ達の魔力をあれだけ流し込んで魔力量が【1000】しか上がらないなんて、そんなの間違っている。

 私達が持っていかれた魔力量と比例していない……」


 すると、ヤマトが残念そうに……


「それだけ、コイツに才能も器も無いと言う事だよ……」


 そう言って、またガックリと肩を落とす。


「そ……そんな…………私の魔力を定着させる手がかりになるかと思っていたのに……」


 そう言ってアリスも肩を落とした。


 しかし、僕は今まで感じた事のない魔力量に心躍っていた。

 そして、この力を与えてくれた皆んなに「ありがとう!」と、伝えた。


 すると、エルフの村長達は——。


「人間の魔力など、こんなもんなのだろう。

 あれだけ魔力を流し込んで、この程度しか止める事が出来ないとは、人間がどれだけ魔力に愛されていないと言う事が改めて分かったわ!」


 そして、色々な人達をガッカリさせた僕はアリスとバニラ、ヤマトと大人しく魔法学校に戻る事になったが……

 僕だけは、多くなった魔力量にウキウキして今まで試したくても出来ない事をやってみた。


 まず闇魔法を拡大拡張して大きくすると、ドラゴンの形を形成した。

 真っ黒な大きな体に大きな翼をつけると、誰もが憧れる黒龍が完成した。

 それに【シャドウドール】による魔法で、意識を持たせると動くドラゴン型のシャドウドールが完成した。

 それに重力魔法(小)と風魔法(小)それと超音波による前方探知を可能とすると安全面の為に風魔法による防御障壁(薄)をかける。これは、飛ぶ際の空気抵抗も軽減する効果もある。

 そして、極め付けには口元には炎魔法(小)を取り付ける。と

 空を飛び火を吐くドラゴンの完成であった。


 この魔法は魔力を10ほど消費する技で、興奮して早口になった僕が、この魔法は以前の僕なら全ての魔力を消費する程の大業だと説明すると、みんなは聞き間違えたのか……


「これほどの大技なら全ての魔力を使ってしまっても仕方ないだろう……」

「1000くらいの魔力だったら使ってしまいますね」

「ああ、使うのは暇な時なだけにしろ……」


 しかし、そんな皆んなの言葉は僕の耳には入っていなかった。


「ねえ、早く乗ってよ! これで帰ろうよ」


 僕がそう言うと、ヤマトとありさとバニラはドラゴンに上ると——エルフの皆んなに、ありがとう。を伝えると……


「行くよ!」


 そう言ってドラゴンで空へと飛び上がった。


 そうして、魔法のドラゴンで魔法学校まで帰ると——少し騒ぎになり。

 次からは、少し前の森か平野に降りる事を心に誓った。


 そして、学校に戻るとすぐさまヤマトは賢者ザガワの部屋にある資料を調べ始める為に部屋に篭った。


 その後の僕はと言うと、今までにないくらいの大量の魔力を手に入れた僕は、その魔力を使い色んな魔法を試すと学校の授業で好成績を残して行った。


 そして、僕は自信を持って塔の情報を聞き出す為にゲンゾウに近づくと——ゲンゾウは前回アリスと共に森の奥で見つけた。

 凶悪な魔物であるドラゴンゾンビの討伐に頭を抱えていた。

 なので、僕は——ここでゲンゾウの信頼を得る為に今回の討伐にゲンゾウのサポートに入る事を提案すると——初めは断られるかと思ったが……僕に何かを感じ取ったゲンゾウは、僕の同行を許してくれる事になった。


 なので、僕は必ず! ここでゲンゾウの信頼を勝ち取り塔の情報を手に入れる事を心に誓った。



🟥🟥🟥【討伐】🟥🟥🟥



 今回、ドラゴンゾンビの討伐に編成された部隊は土の賢者ゲンゾウを中心とした。

 国王直轄ちょっかつの魔法兵100人と冒険者100名による。

 総勢200名の部隊——。

 ゲンゾウは、七星賢者の1人で普通なら自身の部隊を最低でも数千程度は持つのが普通ではあるがゲンゾウは修行の身であり。

 僧侶と言う特殊な職種から自身の兵を持つ事を断っていた。

 七星賢者と言う立場から普通なら納得してもらえないのだが——ゲンゾウは、賢者の中でも最も高い魔力量の保有する為に、国王であるコブラスより。

 それが許されている存在である為に、こう言った有事ゆうじの際には国王の兵を斡旋あっせんして貰える手筈となっていた。


 そして、僕は【シャドウドール】を数十体作り出すと先にゾンビドラゴンが居る森の奥地を調べさせ安全なルートでゲンゾウや兵士達を案内する。

 数日間の遠征をえて、僕達はドラゴンゾンビを見つける為に森の奥へ奥へと進んでいくと……森の奥では、禍々しいオーラがドンドン強くなって行く——。


 そして、森の禁止区域のその奥地でドラゴンゾンビを見つけた。僕達は、戦闘配置につくと——僕は、すぐに全身に影の防御膜を張ると着ていた服が真っ黒になり。

 僕の姿は、黒い服の騎士の様に見えた。

 

 すると、僕達を見つけたドラゴンゾンビはものすごい勢いで咆哮を放つと——。

 数十人のの兵士や冒険者達が、その威圧に圧倒されて動けなくなる者や吐く者も現れた。

 僕は、以前アリスと出会った時は魔力の低さに疲労もあった為にドラゴンゾンビの圧のオーラだけで耐えられず吐いてしまったが……今回は、その威圧にも耐えて見せた。

 すると、ゲンゾウが——。


「数日会わぬうちに、だいぶ実力が上がったとみられる。

 どんな修行をしたのか気になるが……今は、ドラゴンゾンビに集中する事にする」


「ええ、お願いします。

 冒険者や兵士の中にも戦闘不能になっている者が居ると思いますので……」


 すると、ゲンゾウは兵士達を確認すると緊張感を高めた。

 その為、意識がある兵士は意識や戦意を喪失した者達を土の賢者であるゲンゾウが戦いやすい様に避難させた。

 なので、僕も闇魔法の触手を使い負傷者達を避難をさせているとゲンゾウと残った兵士、冒険者達とドラゴンゾンビの戦闘が始まった。


 そして、僕が避難誘導を終えて戻ると——。

 大半の者が負傷していた為に、僕は急いで触手とシャドウドールを使い。その者達の事も避難させると触手を使った広範の回復魔法を行った。

 僕は、これだけ魔法を乱用してもアリスやエルフ達に底上げされた魔力は全くと言って良いほど減ってはいなかった。

 そして、最終的にゲンゾウが1人で戦う戦場に向かうと——。

 僕は、全身に雷魔法を流すと全身の俊敏性を底上げした。

 その後、全身に影を纏わせると全身に絶対防御である影を纏う姿は、羽を生やした悪魔の様な姿をしていた。

 そして、上空から数千本の弓による攻撃をドラゴンゾンビに打ち込むと——圧倒的な手数で攻撃した。

 すると、ゲンゾウが土魔法による力技でドラゴンゾンビを叩き潰す。

 たまらずドラゴンゾンビは、雄叫びを上げるが僕もゲンゾウも攻撃を続けると——ドラゴンゾンビはゲンゾウに標的を合わせると——死の光線を放つ。

 ゲンゾウが一瞬、防御に遅れるが僕がそれを闇魔法の絶対防御でカバーをすると、無事だったゲンゾウにお礼を言われると——その後は、ゲンゾウと力を合わせると2人でドラゴンゾンビの討伐に成功した。


 そして、戦い終えたゲンゾウは僕の姿を見て——。


「何だか、悪魔みたいな姿だな……」


 そう言って笑うと、僕を自分の七星賢者の後継者にならないかと誘って来たので——。

 僕は、ゲンゾウの申し出を受ける事に……


 そして、落ち着いた後で僕はゲンゾウとゆっくりと話すと塔の情報を聞き出す事に成功した。


 当初の目的である塔の情報を聞き出した僕は、ヤマトにも誰に相談する事なく独自で塔の場所、情報をシャドウドールで調べると——。

 誰にも迷惑をかけない様に、連れ去られた妹のルーシーを助ける為に——ゲンゾウより教えてもらった塔の場所へと向かった。

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