【第5章:静かなる違和感】
直樹が洋子に歩み寄る日々が始まった。
彼女と話す時間が増え、時に笑い合い、時に沈黙が流れる。
けれど、その中で直樹は、はっきりとした違和感を覚えていた。
洋子の“心”が、どこか遠いのだ。
ある日の放課後、直樹は校舎の裏手で洋子と二人になった。
「洋子、もしさ。……全部やり直せるとしたら、どうする?」
洋子はふと空を見上げた。
「そんなの、できたらいいね。でも私は、やり直したいことなんてないよ」
——それは嘘だ、と直樹は思った。
だが、彼女を問い詰めることはできなかった。
代わりに、彼女の隣に立ち続けることを選んだ。
たとえ、すべてを伝えられなくても。
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