右足の痣
日曜日。
千穂は1日中、ネット小説を読んで過ごした。
気分転換になるって思ってたけれど、夜になると……色々考えてしまう。
思いきって、ノートに要点を書き出してみることにした。
・巳沢、巳沢村
・優子の兄ー事故?
・蛇の事件ー10年前も
・木下ー私は居た。奈緒は知らなくて当然
・記憶ー忘れてる?
・夢ー誰?
そして少し迷ったが、付け加えた。
・裏山の石の塔?石塚?
・澤田君ー蛇に咬まれた
・裏山で?
ここまで書いたところで、千穂は携帯がチラチラと点滅しているのに気が付いた。
タカミオだ──。
グループRAINから千穂のアカウントを追加したのだろうか?
タカミオからの個人RAINに、千穂の心臓はキュッとなった。
▶こんばんは。
課題終わった?
もし違ったらごめんだけど、最近俺のこと避けてる?
俺の気のせいかもしれないけど、もし何か嫌なことしちゃってたら悪いと思って。
避けてる、避けてた──
どうしよう?既読をつけてしまった。
返事しなかったら、感じ悪いって思われちゃうよね?
千穂は深呼吸をして、返事を送信した。
▶こんばんは。
避けてないです、こっちこそ気にさせちゃってごめんなさい。
課題は結局家系図の事にしちゃった。
木下君、ちゃんと持ってくるかな。
RAINありがとう、おやすみなさい。
千穂はベッドに倒れこんだ。
適当に書き上げたレポートより、頭を使ったかもしれない。
それから──誤って消さないよう、慎重にタカミオを友達に追加した。
……なんだか、特別な気分だ。
千穂は机に向かい、ノートに書き込んだ。
・タカミオー祖父の出身地が巳沢村
・名字のこと言う?
・関係ないかも?
千穂はノートを閉じて、通学バッグにしまった。
部屋に置いておくのは嫌だった。
千穂が居ない時、継母か愛梨が部屋に入ってあちこち触ってるから。
良いものなんて、何もないのに。
千穂は祖母の話を思い出した。
斎藤のおばちゃん。
何かあったら、おばちゃんの家に行くこと──。
おばちゃんは祖母の幼馴染みだし、従姉妹?だっけ──親戚、でもあるので信頼できる。
お父さんより、きっと。
タカミオとのことで、気分が上向きになっていたのは間違いないんだけど……
パジャマに着替えたところで、靴下を脱ぐか履いたまま寝るか、考え込んだ。
右足小指の付け根辺りにある、湿疹の跡。
大きさは一円玉サイズから変わってないけれど、その色は青黒く濃くなっていた。
千穂は不安な気持ちで新しい靴下に履き替え……靴下を履いたまま、寝ることにした。
夢は見なかったのか、覚えていないだけなのか、翌朝はスッキリした目覚めだった。
千穂はキッチンで、菓子パンと牛乳で朝食をとった。
継母は相変わらず素っ気ないし、父親が居ない時に、千穂の事を嫌いという態度も隠さないけど──菓子パンとか、そういうものは用意してくれている。
勝手にどうぞ、と言うわけだ。
相変わらず龍巳はギャン泣きだ。
父の部屋と母と龍巳の部屋は一階だし、赤ちゃんの声は千穂の部屋まで届かない。
聞こえる時もあるけれど、音楽をかければ気にならない程度だ。
いつも真っ赤で可哀想。
泣いて赤いのもあるんだろうけど、千穂が見てわかるくらい、弟のアトピーは重症っぽい。
痒いとイライラするもんね。
──私の足はもう痒くないけど。
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