異世界最強だった魔王、ブラック企業で課長になる。
シリウス Sirius
【第1章】終焉と転生【プロローグ:終焉】
漆黒の空が砕け、世界が沈黙に包まれた。
血のように赤い月が、瓦礫と煙に覆われた戦場を照らす。
「……これが、貴様の全てか。勇者よ」
燃え上がる大地に、重々しい甲冑を纏った一人の男が立っていた。
その名は魔王クロス。幾千の軍勢を従え、幾百の国を支配してきた異世界の覇者である。
彼の前には、剣を杖にしながら立つ一人の青年、勇者レオン。
血まみれの顔に、まだ負けぬという意思が宿っていた。
「……この命が尽きるまで、お前を倒す。それが、俺に与えられた使命だ」
クロスは口角をわずかに上げ、剣を構えた。
「ならば――その使命ごと、我が闇に沈めようぞ」
次の瞬間、爆発的な魔力の奔流が戦場を貫いた。
激突の閃光と轟音――
世界は音を失い、闇へと包まれた。
クロスの意識が、ゆっくりと、深く、静かに沈んでいく。
「……ふ、愚かな……人間どもが……」
彼の最後の言葉は、風と共に消えていった。
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