第2話理解出来ない展開
俺は聖川が借りているアパートの一室に彼女の背中について上がった。
「……あぁ、脱いだままで良いよ。さぁ」
「お邪魔しまぁ……すぅ。ほんとに一人暮らしなんだ……」
俺はスリッパを出されなかったのでそのまま上がり、扉が開いたままのスペースへと脚を踏み入れる。
ダイニングテーブルにはクローバーの模様があるグラスと化学の教科書、参考書が置かれていた。
キッチンのシンクで手洗いうがいをしている最中の彼女から眼を離し、周りを見渡す。
女子らしさを感じられない部屋だった。
「女子らしくないでしょ?ははっ、がっかりした?緊張してる、私のうちに上がって?女子のうちに上がったこと無さそうだし、キミぃ」
「女子の自宅くらい上がったことぅ、ありますよ……何回かは。緊張しますよ、あの聖川さんの住んでるとこなんですよ!?」
「はははっ、面白いね君!リラックスだよぅ、ほらほらぁ。話し相手になってよ、村瀬くん」
彼女がカーディガンを脱いで自身が座るダイニングチェアの背凭れに掛け、高らかに笑い声を上げ、俺の片肩に手を置いて緊張を溶かせ、ダイニングチェアに腰を下ろした。
向かい合う位置のダイニングチェアに腰を下ろし、渇いた喉で返答した。
「話題はなんですか?」
露出度の高い紺色のキャミソールを着た彼女を直視出来ずに視線を彷徨わせた。
「んーっとね……あっ気にせず見て良いよ。校内はさすがにガン見されるとアレだけど。でね——」
「——ふぇえ。……人気者も大変なんですね、あれこれと」
10分程も愚痴を垂らし続ける彼女だった。
「で……したくないの?セックス、私と。こういう展開だと交わるんじゃなくない?」
「しないよ!?なんでそんな思考になるわけ!?したくない……って魅力あるけど、常識は持ちえてるよ……自分を大事にしてよ」
右腕で頬杖を突いて不思議そうに訊いてきた聖川。
俺は大声で否定して、魅力的な行為の誘いを拒んだ。
「そっ。したくなったら、いつでも言ってね。ありがと、じゃあまた明日ね村瀬くん」
落胆する様子もなく呆気ない様に会話を終わらした彼女だった。
玄関で別れる際に愛想のいい声で彼女が別れの挨拶をした。
「来たくなったらうちにいつでも来てよ。愚痴聞いてくれてありがと。スリッパ、用意しとくよ。じゃあまた明日ね!」
「分かりました……ありがとうございます、ではまた明日……?」
俺は扉が閉まってから3分程経っても展開が理解出来ずに扉の前で佇んだ。
俺が帰宅したのは22時30分だった。
公園に居るとクラスメイトに出くわし、絆される 木場篤彦 @suu_204kiba
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