小祭楓は止まらない

じゃじゃうまさん

小鹿恋の思考は止まらない

小鹿こじか こいは、神童である。

優秀であり、優れていて、秀でている。

という字と、禿という字はよく似ている。

これはつまり、『秀でている者ほど禿げている』ということなのだろうか。まだ俺の髪の毛は大丈夫だと思っている。だが、秀でている者は必ず

禿のだろう。

なぜ優秀な、優れている者は、秀でている者は禿げるのかを考えてみた。

俺は文系人間なため、今から適当に話す。いや、思考する。科学的根拠などが一切ない、信憑性がない戯言なため、決してこの話を誰かに拡散したり、自慢しないでほしい。

もし自慢するときはまず俺の名前を出してほしい。

秀でた人は、禿だ。ほかの人間より禿げるのも優秀だからだ。…世の中には、禿げが悪いことかのように、人のことを禿げに絡めて罵る奴らがいる。

そもそも禿げているのは悪いことではない。なんなら禿げている人の方が優秀だ。

これは、成功者はみな禿げているから…のような話ではない。それは罵倒する側の人間そいつらが、禿げていることを悪いことと思っているからだ。

世の中にはたくさん禿げている人がいるが、それは悪いことではないと思う。禿げてればシャンプーやリンスの使用量も減るし、いろいろエコだと思う。

まぁつまり、その人自身が秀でていれば、禿げはマイナスな一面ではなく、一つのステータスとなるのだ。

「…小鹿、どうしたの?」

「あぁ、小祭こまつりか。いやあ、少し禿げについて考えていてね。」

「…大丈夫?まだ小鹿は大丈夫だと思うけど…」

…秀でている俺のことを考えていたはずなのに、禿げの方に話の重心が行き過ぎて誤解を与えてしまった。

「ねぇ禿げ。」

「禿げじゃない。なんだ。」

は来てたよ、依頼。」

___。俺たち高校生探偵は、こうやって事務所を開いている。といっても、親戚のビルの一室を借りているだけなのだが。

「お、一週間ぶりだな。どんな依頼だ?猫探しか…会社の横領の謎でも暴くのか…また合コンの人数合わせとかはごめんだぞ。」

俺たち高校生探偵は、基本的に頭を使う依頼しか受けない。報酬が少ないからとかじゃなく、小祭こまつり かえでが決めた。

__私の頭脳強みでお金を稼ぎたいから、だと。

その意見には。言いたいことはわかるし、納得できる。やっぱりあいつは、俺と違って探偵をしているのではないように見える。

謎を解きたい頭を酷使したいから、俺の金稼ぎの探偵に付き合ってくれているのだろう。

あいつの意見には賛成こそできるが、賛成したくはない。

俺からすると、やはり一番大切なのはお金だ。

お金ですべて買えるとは思わないが、お金ですべて変えることはできるとは思う。

お金は手段なのだ。

お金は歩くことと同じ。喋ることと同じ。許すことと同じ。走ることと同じ。

何かを円滑に進めるためにはお金がいる。だから探偵を始めた。俺と小祭は…やはり、どこか違うのだ。

価値観も、想いも。

「誘拐事件。」

あぁ、そうか。依頼が来たって話だったよな。誘拐事件…

「誘拐事件?お前それ本気で言ってる?妖怪事件とかじゃなくて?」

「うん、誘拐。」

………すぅ……

「報酬は?」

「エアコン二十個買えるくらいの金銭。」

「やる。」

これから始まる謎は、この時の俺ら高校生探偵の依頼の中で、一番大きな謎だ。

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