第46話 レスティーナに行く前に2
マグラーナ城内の一室では先の勇者騒動の功労者であるアレクが傷付いた体を癒やす為に養生している。
そこに見舞いにやって来たシェインが恐らくは最後となる彼との会話に話を弾ませていた。
「今日中にはレスティーナに行く事になりそうだ、アレクとも多分これで最後かもな。」
「そうか、寂しくなるな、君にはもっと色々な事を教わりたかった」
「よせよ、俺はまだ人に何かを教えれるような立場じゃない、アンタならきっと勝手に強くなっていけるさ」
「そう言って貰えて光栄だよ、何処までいけるかわからないけど独学で頑張ってみるよ」
「アリエスなんかは中々強かったぞ?先生役にはうってつけだろ?」
「…………アリエス…か、そうだね、頑張ってみるよ、」
「やっぱりまだキツイか?」
「正直直ぐには割り切れないかな、でも逃げてばかりじゃ駄目だからね、俺なりに頑張るさ、」
「そっか……、じゃあ、俺はそろそろ行くわ、頑張れよ、アレク」
「あぁ、君もな、シェイン」
「おう、じゃぁな。」
そう言って部屋を後にしょうとしたシェインに向かってアレクは戸惑いつつも話かけた。
これが最後になるかも知れないから。
「ありがとうな、シェイン、君がいなかったら俺はずっと何も知らないままだったよ、だからありがとう。」
「ああ。」
アレクの部屋から出てきたシェインをアリエスが待ち構えていた。
ずっとシェインが出てくるのを待っていたようだ。
「悪いな、待たせちまって、用は済んだし邪魔者は直ぐに消えるよ。」
「別にそんな風には思ってないわ、私なりに君には感謝してる、君がいなければ今でも私はアレクを傷つけ続けていただろうから。」
「俺は偽勇者の魔眼がどれほどのもんか今一実感がないし、偉そうな事は言えないけど仕方なかったんじゃないか?
好きであんな事してた訳じゃないのはアレクもわかってんだろうし、まぁ…だからといってどうなるもんでもないのかも知れないけど、」
「そう、結果はどうあれ私はアレクを傷つけた、それも想像出来る限り最悪の方法で、
洗脳されてたってそんな事を言い訳にしていい問題じゃない、私は…私は…」
「ならまた私死ぬとか抜かすのか?」
「馬鹿にしないで!…君に言われた通りそれがただの逃避なのはわかってる、アレクの事を考えない一方的な自己陶酔なのも、だから私は彼の側にいる、例え疎まれようと……側にいる。」
「そっか、」
「もういくんでしょ?」
「あぁ、俺は俺で守りたい人がいるからな。」
「ならお互い頑張りましょ。」
「あぁ、アンタも頑張れ。」
そう言ってシェインとアリエスは互いに健闘を祈りながら背を向け互いに守るべき人のもとに向かう。
城から出てフィーファ達が待つ場所へと向かうシェインを今度はアルフィダが呼び止めた。
「よ!シェイン。」
「アルフィダ、何だよ、唐突に、」
「レイラには言ってあるんだがお前にも伝えとこうと思ってな。」
「なんだよ?」
「ここらで俺は別行動を取らせてもらう」
「別行動?何で?」
「忘れたのか?俺はラティクスの自由騎士だ、王様にもろもろ報告しなきゃならん、フィーファ様の事やマグラーナの事とかな、」
「そっか、寂しくなるな。」
「思ってもない事いうなよ」
「思ってるさ。」
「そりゃ光栄だな、俺はてっきりコレでハーレムだ!とか喜んでると思ったぜ?」
「アルフィダには俺がそんな風に見えてたのか?残念でならないな!」
「ははは、怒んなって!約得なのは事実だろ!二人共美人だし。」
「………、」
シェインにはアルフィダに聞きたい事がここ数日の間で急増した。
もともと聞きたいことは沢山あった。
何故師を殺したのか、
何故俺を殺そうとしたのか、
村にいた頃と違い今は目の前の本人から聞く事が出来る。
のにそうしないのは何故なのか、
多分怖いのだ
聞くのが、どんな返答が帰って来るのか予想出来ないから…
「なぁ?アルフィダ一つ聞いていいか?」
「おう、なんだ?」
「王様を殺して勇者の目を潰したのはお前か?」
「流石だな、あぁ、俺だよ」
「何故王様を殺したんだ?それもラティクスの王様の命令か?」
「いや?俺の独断だ」
「なんで殺したんだ?殺さなくても他にやりようはあっただろ?」
「あるかも知れないが王には退場願うのが1番合理的だ、今のフィーファ姫にはあの王や勇者をどうにかするのは酷だ」
「お前のやった事は独善的だ。」
「無駄な横道を歩いた末に寝首をかかれる事もある、そうなった時お前は後悔しないのか?」
「……俺は俺自身の力量は弁えてるつもりだ…そんな事にはならない。」
「子供の論理が通用する場所じゃないんだよ、ここは」
「………、」
子供の論理か…言ってくれるぜ…たかだか16のガキがよ…。
まぁ今の俺は14のガキなわけだが…。
アルフィダの歩んだ道が…奴の人生が前世の俺の人生より濃密なら…濃いものなら…前世の一生とシェインとして生きた14年間をたしても足りないのかもしれないな。
それか俺の考え方…認識…その全てがシェインという子供に寄っているのかもしれない。
「もう少し広い視野を持て、シェイン、じゃないと後悔する事になる、俺みたいにな。」
「え?」
「選別に良い事を教えてやる」
「いいこと?」
「黒幕はアングリッタだ。」
「は?…何だよ…それ?」
「後は自分で考えろ、本当にお姫様をお前の力で守りたいなら力をつけろ、じゃあな」
「ちよっちょっと待てよ!?」
シェインの静止など意にも返さずアルフィダは歩き去っていく、同じ歩幅で歩いているハズなのにまるで追いつけない、まるで蜃気楼のように朧気で掴み所がない。
角を曲がった時、そこにアルフィダは既になく、最初からそこにいたのか疑問に思えてくるくらいだ
「アングリッタってなんだっけ?」
以前何処かで聞いた様な気がするがまるで思い出せない、フィーファ達に合流後に聞いてみようと思うシェインだった。
何せレスティーナへの道は長い
時間は腐る程あるのだから…。
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