第16話 結末


脳みそ…腐ってるなって、自分で思います。

本当に申し訳ありません。


 


************


仰向けでカエルみたいに股を大きく開き…

猫科の肉食獣のような適度にむっちりとした美しい魅惑的な褐色の肉体を無防備に晒して…

惚けた顔で…ぐったりとしているサラ。


アソコからは…ゴポッ♡ゴポッ♡っと自分が吐き出した欲望の権化が、破瓜の血と混じり薄いピンク色となって溢れ出していて…


下腹部には…

詩織と同じようにハートマークを悪趣味に飾り立てた紋様がピンク色の光を眩い程に放ちながら、デカデカと浮かんでいた。



(サラにも…僕は…隷呪を刻んでしまった…)




全てを出し切ったコトで、情欲の熱が落ち着き…少しの冷静さを取り戻したネリーは…


そんな…あられもない酷い有り様のサラを目の当たりにして…


己のしたことを実感した。



けれど…


それはもう覚悟していたこと。今更…後悔するなんて絶対にしては…いけない。それは許さない。



僕がやるべきことは…


2人を幸せにすること。

それだけが、これからの僕に課せられた使命なのだと…


サラも詩織も一緒に愛すると決めたのだから。


だから…



気絶してしまったサラに毛布を掛けて…

その綺麗な銀髪を撫でながら、そう自分に誓った。




(詩織?外で待たせて…ごめんな。暇だったろ?)


(ううん、あのクズの馬かなぁ。2本の角が生えてる黒い馬。その子が私にすごい懐いてくれてね、ずっとその子と遊んでたから大丈夫だったよ。)


(そっか。うん…なら良かった。)



頭の中で詩織と会話をする。


『念話』


サラに隷呪を刻んだあと…ネリーの隷呪師としての格が上がり、新たに増えた能力の一つ。


それ以外にも幾つかあり…それをネリーは頭の中で整理してみる。



まず自分の格が最初スタートの第12位階から、詩織に隷呪を刻んだ時点で第8位階まで、

それからサラに刻んだことで第6位階まで一気に上がった。


悪魔とダークエルフ…種族としての希少度、それと2人の強さ、あとは親愛度が…最初から最高値だったのが理由だと思う。


そして…新たに出来るようになったのは…



⭐︎隷呪を刻んだ者に格を付けること。


格には『奴隷』『眷属』それと…『お嫁さん♡』があった。『お嫁さん♡』は親愛度が最高値にならないと付けることが出来ない特別な格であり、『お嫁さん♡』に出来る人数にも制限がある。



⭐︎隷呪を刻んだ者との念話


今は『お嫁さん♡』以上の者との念話が可能。



⭐︎隷呪を刻んだ者の情報開示。


隷呪を刻まれた者と自分の情報を確認することが出来る。




この外道で…悍ましくて…最悪なチカラは、

醜い僕の心のカタチ…そのままなのかもしれない。


サラと詩織を隷呪したことで、自分の醜悪を今更ながらに自覚した。




「んっ…んんん……ネリー…?」




暗い感情に囚われそうになっていたネリーの心を呼び戻すように…

意識を失っていたサラが、透き通った鈴の音を思わせるような声で…ネリーの名を呼びながら目を覚ました。



まだボーっと惚けているサラの顔は…うたた寝をしている猫のよう。


心の底から愛しさが溢れてきて…



「サラ…大好きだよ。大事にするね。」


改めて自分の想いを口にして…



「ふふっ。知ってるー♪このクズ男め〜♪」


サラはそう笑って…お腹に浮かんでいる隷呪紋を愛しそうに撫でながら返事をした。


その仕草に…ネリーは隷呪を受け入れてくれた時のサラの姿を思い出す。




全身汗まみれで…足を僕の腰に絡ませて、熱に浮かされた声で叫びながら…


詩織に童貞を捧げてしまった…

心の弱い僕を…


受け入れてくれたサラ。





「うん。クズでも…構わない。僕は、サラのことを離さないからね。」


「あははっ〜。クズでも構わないとか…意味分からんし〜。でも…大好きだよっ♡」


「うん。サラ…ありがとう。」


「へへへ〜♡ でもさ…ネリーもエグいギフトが覚醒したもんだよねー。あっ…でもこれ以上…女を増やすのは、禁止だかんねっ。それは……分かってるよね…?」


「うん。もちろんだよ。ごめんね…」


「うん。細かい話は…後で聞くとして。じゃあ…とりあえず服着て…これからのコトを話そっか?」


「うん。」


サラの言葉にネリーが頷いて、

それから…お互いに服を着て馬車の外へ2人が出ると…




「きゃはは、くすぐったいってー。ダメでしょう、もー。」


漆黒の巨体をした魔馬に戯じゃれられて、楽しそうに笑っている詩織が…そこに居た。


前世では…


再会してから…コイツのこんな顔を見るコトはとうとう最後まで出来なかったなって…


前世の僕達が無邪気に…何も考えずに一緒に居れた、俺達がきっと一番幸せだった頃の笑顔。


もう二度と見ることが叶わなかった筈の…

それをまた見るコトが出来て…


今は…ただ嬉しい。



「詩織ー、大丈夫かー?」


「あっ、カズ君っ!お疲れ様ー♪私は大丈夫だよー!」




あぁ…懐かしいな。




ネリーが感傷に浸っていると…

隣りに居たサラが笑いながら、詩織を揶揄った。



「痴女メス〜、今度は魔馬を誘惑するなよー!」


「しっっ、しないよっ!?サラちゃん、酷いよー!!」



詩織は手をパタパタさせながら、それを否定して…ネリーは2人の掛け合いを見て一瞬心に焦りが生まれたけれど、


(これは…これでいいのかなぁ……2人共…笑ってるからアリなのかな…)


そう思うことにして…



「じゃあ、これからの話をしよっか。」


そう2人に声をかけて、3人でこの先のコトを話し合った。


まずネリーが2人に伝えたのは、自分のギフトについて。


何一つ隠すこと無く、全部を伝えると…2人はすごく微妙な顔をして…



「ネリーは…これ以上強くならなくていいからねっ、いや、マジで。」


「うん。サラちゃんの言う通りだよ…このままじゃ…カズ君…女の子達の共用バイブになっちゃうよ・・・カズ君の敵は…私達が皆殺しにするから…だからね、これ以上…メス奴隷は増やさないでね…」


「いや…アタシはメス奴隷じゃないからね。マジで。お・嫁・さ・ん・♡ だからっ。」


「私だって…お嫁さんだよー。カズ君専用のメス奴隷でお嫁さんっ♡」



・・・


''強くならなくていい''


そう2人に言われ…正直に言えば、悲しい気持ちになった。


2人に悪気が無いのは分かっているし…

僕のチカラが、2人に到底及ばないことも自覚している。


でも…僕だって男だ。愛している女性ひとを守りたいって気持ちは当然ある。


それはサラと2人で冒険者をやっていた時から。

いや…それよりももっと前、サラのお父さんが亡くなってしまった時から、ずっと。


この世界は前世とは比較にならない程に…暴力がモノをいう世界だ。


だから…僕は…強くなりたい。


2人を守れるように…


大切なモノを失わないように…



ちょっとずつでもいいから、やっぱり…自分の大事なモノを守るチカラは必要だから。




「分かってるよ。僕が愛しているのは2人だけだから。でも強くなる努力はするし、2人を守る為なら…僕はどんな犠牲を厭うつもりはないから。」


強く心に誓いながら、2人にそう言うと…


「うん。3人でね、一緒に強くなればいいっしょ♪」


「そうだよね!いつでも3人一緒に居ればいいもんねっ♪」


2人はそう言ってくれた。



それから…本題に入り


とりあえず僕達は王国を出て、隣りの帝国に行くことにした。


辺境伯家のバカ息子も金等級パーティも殺してしまったし…


村も焼いてしまったし…


きっと直ぐにでも、手配書が王国中に出回ることになるだろう。


でも隣りの帝国に行ってしまえば、関係無い。


大規模な戦争になってはいないが、小競り合いを繰り返している帝国と王国との間に情報交流は殆ど無いから。


冒険者ギルドは多少の繋がりはあるが、基本的には国単位で独立しているので…もし何か問われたとしても、しらばっくれてしまえばいい。



別にこの国にもう未練も無い。このまま3人で安住出来る土地を探しながら旅をしていく。

ちょうど良い馬車も魔馬も手に入ったし。



「ねぇ、詩織?一つお願いがあるんだけどさ、いいかな?」


「うん。もちろんっ!どうしたの?…えっちなお願い?♡」


「いや…アンタ…本当…何言ってんの?」


「あははっ、いや、サラにも手伝って欲しいんだけど…1度さ、村に戻りたいんだ。それで…」



ーーーーーーー



「うん、うん。そんなことでいいの?」


「それ以上は…もう関係無いかな…サラも…それで許してくれる?」


「許すも何もさ、アタシ…そんな聖人じゃないよ。

ただ…カレンちゃんに不幸になって欲しいとは思わないし…アタシ達が出来るのは、そこまでじゃないかな。あとは…本人次第でしょ。」


「うん。じゃあ…それだけやったら、のんびりと帝国に向かおうっか。」


「うんっ、カズ君。」


「だねー!じゃあ…あっ!?アッ、アタシ…とりあえず…馬車の中…掃除すんね……」



サラの表情が途端に曇り…気まずそうな…呟くような声で、そう口にした。



(あーーーッッッ…!!)





俺も…完全に…すっかり忘れてた…


馬車の中の…惨状…




「あっ!?私…アレ使えるよ、『清浄クリーン』っていうの?私が掃除してあげるっ!」


詩織がそう言って、馬車の方に飛んでいった。



「あっ!?ちょっ…ちょっと待って!!見ちゃダメぇっっーーーー!!」


それをサラが後ろから慌てて止めようとしたけれど…間に合わなかった。

馬車の扉を開けた詩織が…股をモジモジさせながら…



「うわぁーー…サラちゃん…随分と幸せにされちゃったんだね…いいなぁ〜♡」


心底羨ましそうに言った。

淫魔に生まれ変わった詩織は…すごく股間に悪い。思わず押し倒しそうになる。



「っ!?うっ、うっさいしっ!仕方ないでしょっ!あっ…あんな……♡」


「ふふっ。凄かったもんねー?サラちゃんの声…♡ 私、びっくりしちゃったもん。」


「やっぱ…マジ…ムカつく…」


「ちょっ…ちょっと2人共っ?やめて、ねっ、お願い?僕はサラの声も、詩織の声も好きだからねっ?ねっ?」



正直…


僕は女の子2人の間で、どうやって上手く立ち回ればいいかなんて分からない…


多分ずっと…こうやって、僕はワタワタしている気がする。それでも…


分相応以上のモノを求めてしまったんだから…

自分なりに精一杯やろうと思う。



「っ!?カズ君…♡ うん…ごめんなさい。でも…私も、サラちゃんみたいにして欲しいなぁ♡」


「ネリー…♡ ふっ、ふーん…♡ そっ…そっかぁ〜♡ じゃあ…また聞かせてあげるねっ♡」



でも僕は…幸せだ。







清浄クリーン

詩織がそう唱えると、馬車の中が一瞬で綺麗になった。


僕は中に入り馬車をベッド状態から元の座席に戻して、

それから中を物色すると…座席の下から柔らかな黒革で作られた巾着袋が出てきた。


まさかと思ったけど…

流石は辺境伯様の息子様だった。



上級マジックバッグ


これ一つで白金貨一枚はする筈。


見つけた僕がニヤニヤしていると、


「んっ?ネリー、何かあったのー?って…わっ、マジックバッグじゃんっ!!しかも上級っ!」


「なに、なに〜?その革袋すごいの?」


詩織はこの世界に来たばっかりだから、この存在は知らない。



「これはマジックバッグって言ってさ、ーーー」



マジックバッグは、迷宮の中で見つかる人智を超えた代物の一つ。上級から下級まであって、下級は迷宮の浅層でも見つかることがあるが、上級は深層でしか手に入らない。


このバッグの中に、この馬車くらいなら…余裕でまるまる収納出来る。しかも時間停止機能付き。


その事を詩織に説明してあげると、



「うわぁ、すごいねー!ねっ、何が入っているか見てみようよっ♪」


詩織がそう言ってバッグを漁り出した。



「そうだよねっ♪あのクソ、アタシの髪とか触りやがったからなー。全部貰っちゃおっ♪」


「うん、当然…全部貰っていくよ。」



それから…僕も一緒になって、マジックバッグの中身を一度全部出してみた。



「おー、このジャラジャラいってる袋は、アレだねー」


サラが取り出したのは金貨が入っている袋。中には金貨が30枚程入っていた。



「次は私の番だね。あっ、これ何かな?」


ズルズルーっと詩織が取り出したのは…黒皮のベルトで出来た拘束具…ご丁寧にギャグボールまで付いていた。


「あっ……♡ これ……♡」


「えっ、何それ…?うわっ、マジか…そんなの早く捨てよっ?」


サラは詩織が手にしたその拘束具を見て嫌悪感を露わにして、そう言うと…



「えっ…ダメだよ… もったいないでしょ。ふふふっ…♡」


詩織は淫靡な光をその目に宿しながら…その拘束具を自分の後ろへと、サッと隠した。


それから…マジックバッグの中から出てきたのは、かなりの量の食べ物と酒と水と…



「うわー…あのクソ…マジでヤバいなぁ…こんなのを、アタシに着させようとしてたのかよ…それにこんなのまで…本当に最悪…」



スカートの丈が膝上20センチくらいしかない…えっちなメイド服、卑猥な下着、それと…大量の大人の玩具だと思われるモノ。


この世界で…こんなモノが売られていた覚えは無い。


初めて見たけれど…前世の記憶とその形状から…これがソッチ方面のモノだとは分かる。

そしてサラもなんとなく分かるらしい…


「これは…捨てていこっか?」



僕がそう言うと…

詩織が「清浄っ!」って唱えて、それから…そっとメイド服を手に取った。



「あのね、私…コレ着てみたいな…♡ この淫魔の格好は…ちょっと恥ずかしかったから。もう…こんな姿を見せるのは…カズ君だけにしたいの…♡」


詩織は…僕に甘えた声で、そう伝えてきて…


そのまま魔法でメイド服の背中に翼を出すための穴を開けて、その場で着替えを始めてしまった。


背中の翼は一瞬だけ消えて…着替え終えた後、開けた穴から器用にパッと翼を出した。


「詩織…翼は消せるのか?」


「あっ、うん。ツノと尻尾もね。でも出している方が楽みたい。だから…翼出しちゃったっ♪

えへへー♡ どうかなぁ、カズ君?似合ってる?」



詩織はそう言うと、フリルとレースで飾られた短いスカートの裾を両手で軽く摘んでポーズをとって…俺の方へと向いた。



「あっ、ああ。すごく可愛いと思うよ。」


無邪気に頬を染めながら…嬉しそうに軽く首を横に傾げて尋ねてくる詩織は、掛け値なしに可愛いかった。


「ふふっ、良かったー♪ 可愛いって言って貰えて…嬉しいなっ!♡」


詩織がパッと花が咲いたような笑顔で喜んでくれる。それを見た自分も…自然と笑顔になった。


ーーーーーーーーー



その光景を横で見ていたサラは…


(いや…あざと過ぎっしょ…天然混じってコレとか……詩織…女子力っていうか…雌力高過ぎん…?まっ、負けてらんないしっ!)


「ねぇ…ネリー?あっ…アタシもさー、下着汚れちゃったし…コッチの…履いてみよっかなぁー♡?」



手に取ったのは、紫色の透けたレースの下着。

冒険者のサラは…普段履き用の地味な綿の下着しか持っていない。

こんな卑猥な下着を手に持っているだけで恥ずかしかったが…頑張って身体に当てて…


詩織に負けたくない、その一心で羞恥にプルプルと震えながら、ネリーにアピールした。



(アタシも可愛いって…言ってくれるかな?)


ドキドキしながら…ネリーの言葉を待つ。



「あっ…ああ。すごい似合ってるよ、サラ。うん…すごく…綺麗で・・・」


「うん、うん。それで…それで…?」



サラの乙女心は…綺麗よりも、可愛いと言って欲しかった。だから…期待しながら続く言葉を所望した。


けれど…まだ女性経験の浅いネリーには…サラの欲しい言葉は分からなかった…残念。


そして…その下着は童貞を卒業したばかりのネリーには少々刺激が強過ぎた。サラが着たら、本当に…似合っているし…綺麗だと思っているが…それ以上にエロいと感じてしまう。


でも…それを口にして良いのか分からずに口籠もってしまって…


すると横から見ていた詩織が、


「サラちゃん、その下着…すごくえっちで似合ってるよね♡ なんか…エロギャルって感じで、すごーくえっちで良いと思うなー♪」


エロは…褒め言葉になるんだと、ネリーは思った。だから、正直に言った。



「うん、エロ可愛い。」


「あははっ、そっか。エロ可愛いかぁー…嬉しいな゛ぁー…」



(ちょっと…違うんだけどな゛ぁ… でも…ネリーが喜んでくれるなら…今度着てみよっかな゛ぁ……ぐすん。)


サラはそう思いながら…黙ってその下着を自分の名前を書いた袋にしまった。


そんなサラを見た詩織は、



「じゃあ、コレも綺麗にしたから、仕舞っておくねっ♡ えっちな下着は全部サラちゃんのっ♪」


そう言って、卑猥な下着は全部サラの袋の中に入れて…

その後、自分の名前を書いた袋の中に大量の大人の玩具を仕舞い込んで・・・

またマジックバッグの中に戻す。



(ふふっ♡ カズ君に…前世のコト…これ使って…いっぱいお仕置きして貰おう…♡)


詩織はそれを想像して…


自分のお腹がじんじん熱くなるのを感じて…

はぁぁ…♡っと、艶めかしい吐息を吐いた。



そして、ネリーは…その光景を黙って…複雑な気持ちで眺めていた。





それから3人で水や食料やらを全部マジックバッグに戻したあと、



「じゃあ…行く前にさ、コイツ等を焼いていこう。詩織、お願いしてもいい?」


ネリーは辺境伯家の息子の死体を指差して、詩織に頼んだ。


「うん。もちろんいいよ。地獄の業火!!」


直径50センチほどの火球が詩織の手から放たれて…


ボォォゥッ!!っと辺境伯の息子の死体が禍々しい炎に包み込まれ、燃え上がる。


地獄の業火は…そのまま詩織の魔力と負の感情を糧に燃え続けた。



その炎の中に、ネリーは自分が殺した御者の死体をドカッっと無表情で投げ入れる。


コイツは…死ななきゃいけない程のことをしたのだろうか……でも、結果サラを守るコトが出来たのだ。だから…それでいい。



そう自分に言い聞かせて…

その光景を眺めていたサラを後ろから、そっと抱き締めた。



「ネリー…?大丈夫だよ…全部…嬉しいコトも、罪も罰も…ぜーんぶ、ウチらで分かち合えばいんだよ。大好きだよ。」


サラはそう口にして…ネリーの手を上からそっと握って…自分の隷呪紋の上にあてた。



「あー!?サラちゃんだけ、ズルいんだー!

あれっ?ベルーチカ、ゴミ持って来てくれたの?じゃあ、一緒に燃やしちゃおっか?」


そう口にした詩織の視線の先には、

魔馬がかつての主人の亡骸を咥えて…立っていた。


そして詩織の言葉を聞くと…魔馬はドンッっと、その亡骸を燃え続けている業火の中に放り投げて、それから低い声で一鳴きした。



「ベルーチカ、ありがとね。ねー、カズ君、サラちゃん?私も入れて欲しいな…?」


「ああ、詩織…もちろん。」


「んっ、分かってるし…ほらっ、早く入りなよ、詩織。」



そしてネリー達はそのまま…身体を寄せ合いながら…

炎が3人の死体を、骨も残らぬ程に燃やし尽くすまで眺めていた。





その後、3人は村へと向かって馬車を走らせる。

操縦するのはネリー、その左右にはサラと詩織が座って…

馬車の後ろには詩織にベルーチカと勝手に名付けられた魔馬が嬉しそうに付いてきていた。



目的はクソ共が残したままのキングボアの討伐。


森の近くで馬車を置き、ベルーチカに見張りを頼んだ。


森に入り、すぐさまサラが『気配感知』のスキルを発動させる。そしてしばらく歩き回って、


「キングボアは…あっちかなー。」


正確な感知範囲は半径50m程度だが、大雑把でよければ300mくらいまで感知出来るようになった。

しかも探索対象は一度目にした相手である。今のサラにとって、キングボアを探し出すことはそう難しいコトではなくなっていた。


「うん。じゃあ、行ってみよう。」


「「うん。」」


そして3人で走って移動を始めた。タタタッっと走りながら…ネリーは身体に違和感を感じる。


(あっ…身体が軽いっていうか…全然違う。)


サラも詩織も力を抑えてくれているのは、隷呪紋を通して伝わっている。


けれど…それでも戦う才能においては、殆ど無いに等しかった自分が、曲がりなりにも彼女達についていけている。


2人の1%分のチカラ…

それが、これ程までに違いを齎もたらすとは思っていなかった。


渇望したチカラが少しでも手に入った喜び。


それは純粋に嬉しかった。


それが例え…

歪んだ方法で得たチカラであっても。



キングボアはあっさりと見つかった。

そして、あの時…初めて見た時に覚えた恐怖感は全く無くなっていた。


「ねぇ、アレの始末は…俺にやらせてみてくれないかな?」


ネリーは2人にそう言った。

今は恐怖感よりも…このチカラを確かめてみたい、その欲求の方が完全に勝っていた。



「えっ。あっ…うん。分かった、任せるね。」


「カズ君…怪我しないでね。」


2人は…正直なところ、ネリーには戦って欲しくはなかった。無理して戦わなくても…私達が彼の剣となり、盾となればいい。それが本音であった。しかし…


主従の関係ならば、それで良いのだろう。

割り切れるのであれば、それで良いのだろう。


でも…私達の関係は違う。


ネリーがそれを望んではいないだろうことを…

2人は容易に想像出来た。



一方的に守られるだけの関係は…いつかきっと破綻を迎えてしまう。


彼はそれに甘んじれる程…強くはないから。


だから…彼がチカラを望んだら…

そう思って…2人はそこから先は考えるのをやめた。



「サラ、詩織、ありがとう。」


そう言って…



ヒュンッ…っとネリーはキングボアに向かって飛び出していった。


手に持つのはサラの父親の形見の細身の長剣。


ゼトの持っていた槍は、どうにもネリーの手にはしっくりこず、馴染まなかった。



才能こそ無かったが、ネリーもサラの父親から剣の手解きを受けていた。

サラの父親が亡くなってしまってからも、習った基礎練習を毎日続けていた。


8年間


コツコツと…サラを護りたいという想いだけで続けてきた努力が…

サラ達と隷呪で繋がったことで、




とうとう開花した。


まず何も無かった戦闘スキルに『剣術』が追加


それにサラと詩織、それぞれの身体能力値の1%が自動的に自分に上乗せされ、


サラの戦い方…

魔力を自らの筋肉に纏わせ、強化させる。


そして更に支援魔法を自分自身にかけて…


最後に詩織の『獄炎魔法』


それを剣に纏わせて…一閃



シュパッ…



キングボアの首が、咆哮を上げる間も無くポトリと落ちた。



「やった……」


手に残る感触。自分も戦うことが出来る。

それが嬉しかった。



「ネリーっ!すごいしっ!ヤバっ♡」


「カズ君…かっこいい…♡」



2人からあがる歓声に…照れ臭くなり、



「んっ…これで…僕も少しくらいは…2人を護ることが出来るかな?」


頬を赤く染めて…そう応えた。






それから討伐したキングボアをマジックバッグに入れて村へと3人は戻った。


村は村長の家を中心に1/3ほどが完全に焼け落ちていた。それを見たネリーは、


村がサラの母親にした仕打ちを考えたら…まだ足りない…


そう思う一方、これなら…まだ立て直せると安心している自分もいて…



(こんなもので済んだんだ…)


そんな感想を覚えた。



そんな現況の村の人間から…もちろん自分達が歓迎されるワケが無いことは分かっていた。


キングボアの討伐はただの偽善だとも理解していた。ただ自分達の心を慰めるためだけの…



サラは…燃えた村の様子を見て、

「あっ・・・」っと小さく声を溢した。


「ごめん…サラ。」


ネリーがそう言うと…


「ううん…」


サラは…複雑な顔をした。ネリーは…


サラの母親の話は…サラにはしていない。

知らない方が良いことなんて腐る程ある。


さっさと…エレンにキングボアを渡して…帰ろうと思っていた。

父親は…俺が殺してしまった。それに…後悔は無い。許せるワケないだろう。


許されるワケないだろう。


人間だから…過ちは…誰にでもある?


だったら…俺が殺したコトだって、過ちだ。


同じだろう?


けれど子供は…?カレンはこれからどう生きていく?おばさんは…?知っていたのか?




俺達を見た村の人間の反応は…

覚悟していたけれど……



「なっ…何をしにっ戻って来たっ!このバケモノっ!!」


「何なのよっ!アンタたちっ!!」


「ひッ…ひぃ゛ッッ!寄るなっ!!」


「何でアンタがここに居るのよッ!辺境伯様の息子様はどうしたのよッ!まさか、また殺したのっ?」



けれど…想像以上だった。



サラの家は無事だった。隣りの家も。



「もう…黙って、置いて帰ろう…?」


サラがそう言った。

詩織は…村に着いた時から、終始無言だった。



「ああ…うん。」


マジックバッグから、キングボアの死体を引き摺り出して、隣りの家の前に置いた。



「サラ、詩織、帰ろう。ごめんね。」


サラの家に背中を向けて歩き出して…


ガチャっと音がして、



「パパを返せッ!!オマエラなんて大っ嫌いだッッ!!」

「こらっ、カレンっ!やめなさいっ!あなたまで殺されちゃうわっ!!」



ネリーは振り向かずに、そのまま歩き続けた。



詩織がぼそっと…


「ねぇ…カズ君…?やっぱり…この村の人間…全部…燃やしちゃおっか…?」


そう呟いて…サラが、


「あ゛ははは…」って、笑って…



「いいよ…そんな価値もないって。さっさと、馬車に戻ってさ…3人でのんびりと旅を始めよう?」



僕はそう言って…


ここから、僕達の旅が始まった。








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