第8話 詩織
人によっては不快な内容を含みます。
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変わらずに燃え続ける村の中を通り抜け、俺達は村の入り口までやってきた。
「カズ君、どうやって追いかけるの?」
「俺はコイツらが乗ってきた馬を使う。詩織はどうする?空を飛んでいくか?」
「うん…あのね…出来れば、一緒に馬に乗っていきたいかな…少しでも魔力を残しておきたいの。」
詩織は気まずそうに、そう口にした。心なしか顔が少しやつれている気がする。
再会した時には…はっきり目に見える程だった魔力も、今は薄っすらと視認出来るくらいに弱まっているし…
それでも目に見える時点で異常なんだけど。
「大丈夫か?」
詩織に尋ねる。でも…無理はするなよ、とは言えない。無理をしてでも、俺はサラを取り返したい。
「うん。大丈夫だよ…早く幼馴染の女の子を取り返しに行こ?」
そう口にした詩織は…少しだけ前世の最悪な記憶の詩織を彷彿とさせた。
俺は残っていた馬の中で一番足の速そうなヤツを選んで、それ以外の馬は繋いでいた縄を切って自由にして…
それから選んだ馬の手綱とたてがみを掴んで鐙に足をかけて、トンッと乗って。詩織に手を伸ばした。
「ほらっ…乗れよ。」
「いいの…?」
また俺の反応を伺うような目をして、尋ね返してくる。
「早く行かないと…間に合わなくなるだろ。ほらっ。」
「うんっ。」
詩織を後ろに乗せて、馬を走らせ始めた。
入り口に車輪の跡があったから、あのクソは馬車なんだろう。だったら余裕で追いつける。
全力で馬を飛ばす。馬に乗るのは数少ない僕の特技の一つだ。馬が疲れてきたら、俺の治癒魔法で回復させればいい。
悪いな、ちょっと付き合ってくれな。
馬に心の中で謝って、
「詩織、落ちるなよっ!!」
詩織に呼びかけると
「うんっ、カズ君っ♡」
そんな返事が返ってきて、俺は気合いを入れ直した。
ーーーーーーーーーーーー
カズ君と一緒に馬に乗ってる。
夢みたい。
でも私は馬鹿だから…
もし私が間違えちゃう前に…私が好きだった漫画の主人公みたいに…
カズ君が今みたいに迎えに来てくれてたらな…
なんて考えてしまって・・・
ちょっとだけ悲しくなってしまう。
私の力は持つかなぁ…
私は失敗してしまったけれど…
この世界のカズ君の幼馴染には…
私の代わりにカズ君と一緒にハッピーエンドになって欲しい。
あの時…
カズ君が自殺したのは…私の所為だった。
私がカズ君に縋ってしまったから…彼の人生は狂ってしまった。
私が弱かったから…
カズ君が自殺してしまったあと…
私はずっと家に引きこもって、毎日泣いてた。
カズ君が助けてくれて…
少しずつ良くなってきた心と身体。
それが…
精神的に不安定になってしまったからだろうか…殆ど無くなっていたのに…
発作的にあの衝動に駆られるようになって…
必死に我慢して…だけど・・・だんだんとその間隔が短くなってきて。
でも絶対に元に戻りたくなかった。
今の…心と身体は…自殺してしまったカズ君との最後の絆だから…
衝動に駆られた時は、タオルを噛んで自分の腕に爪を立てながらギューっと握って、必死に耐えていた。
ある日、お母さんと一緒に病院に行って、クスリをもらって…
お母さんが支払いに席を立った時、不意に後ろから声をかけられた。
「よお、久しぶりじゃん。元気してたかよ、公衆便所ちゃん。」
あの…クズだった。全身が恐怖で粟立った。
「あっ…あっ…あっ…あっ…」
怖くて…怖くて…声が出なかった。身体中が…カタカタと震えた。
「何震えてるんだよー?久しぶりに犯してやろうか?ほらっ、皆集めてさ、またワケ分かんなくなるまで気持ち良くしてやるよ。」
「やっ…やっ…だっ…」
「アハハッ、そんなビビるなって。携帯持ってないんだろ。コレ、俺の連絡先な。またヤリたくなったらさ、電話してこいよ。じゃーなー」
クズはそう言って…そこから去っていった。
私は急いで…トイレに走った。
確かめたかった。私は大丈夫だって。
正常だって。
ドアをバタンッと閉めて…急いで下着を降ろしてみると…ツーって…糸を引いていた。
私はアソコは…濡れていた。
「あっ゛あ゛っ…あ゛あぁ゛っっっあ゛!!」
ヤダ…ヤダ…ヤダ…ヤダ…ヤダ…
「もう゛っ…ヤダ…ゔぅっっ…ゔぁ゛ぁ゛〜」
それから病院の人が来て…お母さんが来て…
その日は病院に泊まって…
私は病室のベッドの中でガタガタ震えていた。
怖くて仕方がなかった。
いつかまた…負けてしまうんじゃないかって。
せっかく…
カズ君が助けてくれたこの心と身体を…
また自分で汚してしまうんじゃないかって…
それだけはイヤ…だ…
会いたい゛…会いたいよ゛ぉ゛…カズ君…
目をギュッと瞑って…それだけを考えていた。
「あははっ。いいわよ、叶えてあげる。」
「えっ?」
突然女の人の声が聞こえて、目を開けると…
私は真っ白い空間に居て…目の前に、長い黒髪を腰まで伸ばした、すっごい美人さんが居た。
綺麗な黒髪…あれが濡羽色の黒髪っていうんだろうなぁ…
私の黒髪も…昔…カズ君が好きだよって褒めてくれて、あの酷い時も髪だけはちゃんと手入れしてたっけ…
カズ君が死んでから…何もせずにいたから…
もうボサボサになっちゃった…
「貴女、私の話…聞いてる?」
「えっ。あっ…ごっ、ごめんなさいっ。」
「ハァ…いいわよ。それで…もう一度会いたいんでしょ?その幼馴染の男の子に。」
その美人さんは、少し呆れながら私に尋ねてきた。
「はっ…はい…でも…カズ君…死んじゃったから・・・」
「ふふっ…その男の子ね、実は・・・
ーーーーーーーーー私の世界に居るのよー!」
「えっ?」
「貴女の幼馴染、和希君でしょう?あまりに可哀想な主人公だったからね、私の世界に魂ごと転生して貰ったのよー。」
美人さんは楽しそうに笑って言った。
「それでねー、彼には前世の記憶を忘れてもらって、私の世界で楽しく過ごしてもらおうかなって思ってたんだけど…
上手くいかないのよねー。負け主人公の魂に刻み込まれた不幸体質ってヤツなのかしらね。せっかく特別なギフトもあげたのに、それにも気付かないし。
だからね、貴女達に転生じゃなくて、転移してもらって、それで私の推しを助けてあげて欲しいのよ。どうかしら?」
正直…私はこの美人さんの言っていることが、良く分からなかった。
でも…カズ君にまた会えるのかな…
「もちろん会えるわよー!私が目指してるのはダークファンタジーっぽい…ぐちゃエロどろ沼ハピエンストーリーだもの。
それでね、貴女はそうねー、快楽堕ちキャラだったからー、真祖のサキュバスとして生まれ変わるのは…どう?」
何を言ってるんだろ…?
ハピエン…?サキュバス…?よく分からないけど…
でも快楽堕ちって言葉だけは、グサグサッって胸を抉った。
そうだよね…私…
でも…また会えるなら…
それにこんな世界から…逃げられるなら…
「私を…生まれ変わらせて…あなたの世界に行かせてくれますか?」
「ふふっ。分かったわ、ありがとね。じゃあ特別に転移特典付けてあげる。転移だと…本当は身体はそのままなんだけど…サキュバスに生まれ変わって貰うし、せっかくだから…処女の時の綺麗な身体に戻してあげるわねっ!処女膜も復活よっ!!」
あっ…それは・・・正直嬉しい…
「じゃあ、今から転移させるわよ。準備はいいかしら?」
「えっ…あっ…もうですか?」
「もちろん。着いたら…即⭐︎修羅場だからねー。頑張ってね♪じゃあよろしくっ⭐︎」
そう言って、すっごい美人さんはウインクをして、私に手を振ってくれた。
そしたら…スーっと視界が暗くなって…
一瞬だけ夢かと思ったけど…
音もない真っ暗な空間の中で…
自分の身体が変化していくのが分かった。
痛いとか痒いとかそういうのじゃなくて…
自分の意識以外が全部、ぐちゃぐちゃに溶けてしまって…ゼロから産まれ変わる感じだった。
きっと蛹の中の蝶々は…こんな感じなんだろうなって思って…
少し経って…あぁ、違うなぁ・・・って
私は…蛾だった。
少しずつ自分がどんな存在に変化しているのか…自然と理解してきて…
草食動物が草を食べるみたいに…
肉食動物が…動物を襲って食べるみたいに…
産まれ変わった私の生命の源は…
男の精だった。
それを蛹の中で理解して…
アハハッ…私にぴったりだ…
私の心が真っ黒のドロドロに変わっていく。
悪魔がきっと…本当に憎んでいるのは…
きっと自分の存在なのだと思う。
望んで…こうなったワケじゃない…
恨めしくて…妬ましくて…
人に在らざる者
自分の存在がカタチをもって…
新しい世界に顕現した。
そして…すぐに私の目に映ったのは・・・
それは全く変わっていなかった。
そこに居たのは私が人生で1番幸せだった頃の…幼馴染の男の子だった。
嬉しくて…身体がブルブルって震えて…でもすぐに震えは止まった。
その男の子はこの世界の幼馴染の女の子を…必死に守ろうとしていた。
なんで…なんで…なんで…なんで…
嫉妬なのか、悔恨なのか、怒りなのか…
色々な感情が渦を巻いて…狂いそうになった。
身体が動かなかった。
その女の子が泣きながら連れて行かれてしまうのを…私はただ呆然と眺めていた。
そして、カズ君は…立ち上がった。
私の幼馴染は諦めていなかった。その顔を…
私は知っている。
私が縋って…カズ君自身が潰れそうになって…それでも手を伸ばしてくれた時の。
人じゃなくなっても…私は…
私はカズ君を虐めている醜いクソ豚を殺した。
もう感情がぐちゃぐちゃだ。
もう一度カズ君に会えたことが嬉しくて、淫魔の私は我慢出来なくて…甘えた声を出してしまう。
欲しい…欲しい…欲しい…
カズ君の精だけで生きていきたい。
カズ君の顔が歪んだのが、分かったけど…淫魔の私は言葉を止められなかった。
ただ前世のコトはしっかりと謝らなきゃって…
私が謝ったあと、カズ君は…吐いてしまった。
悲しくて…死にたくなるけど、私はカズ君を助けに来たんだ。そう思って。
まだ混乱している頭で精一杯に自分の気持ちを伝えた。そしたらカズ君が私を受け入れてくれたのが分かった。
嬉しくて…嬉しくて…
少しだけ…あの頃の調子で話してしまう。
そして…一緒に自分が悪魔になってしまったことも話してしまった。
でもカズ君は…気にしていなかった。信じるって言ってくれた。
嬉しい…
そしたら突然…雑音が飛び込んできて…
とっても幸せだったのに、あの世界のゴミと同じ匂いがするゴミがやってきて…私達の邪魔をした。
ゴミは悪臭を撒き散らしながら…クソみたいな言葉を吐き続けた。
私は…モノじゃない。公衆便所じゃない。
そんな目で見るな。
殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。
絶対に殺す。
もうカズ君は壊させない。
ただ眺めていたヤツも同罪だ。
真っ黒に染まる心と反対に思考は冷静だった。
全部燃やし尽くしてやった。
それから、カズ君を虐めていたヤツを嬲っていたら…カズ君が止めてくれた。
でも…やっぱり私は冷静じゃなかったみたい。
チカラを使い過ぎてしまった。
魔力を使った淫魔の身体は…
カズ君の精が欲しくて狂いそうになっている。
我慢だ…
馬の上で、後ろからカズ君の腰に手を回して、
ギュッと抱き締めながら…背中に顔を埋めて…
もう一度、強く思う。
私の力は使い切っても構わない。
私は失敗してしまったけれど…
この世界のカズ君の幼馴染には…
私の代わりにカズ君と一緒にハッピーエンドになって欲しい。
でも…でもね…
もし…私が死ななかったら。
そのハッピーエンドに…
私も入れて欲しいな…
そう思っていたのに…
不意にカズ君がお尻を上げた。
目の前にカズ君のお尻と股間が現れる。
すぅ〜〜〜〜〜〜♡
ーーーーーーーーーーーーーーーお゛っ゛…♡
大好きな人の濃厚えっちな匂いが、私の鼻腔を突き抜けて…淫魔になった私の頭の中を満たして・・・
雷に落ちたみたいに、頭から腰まで…甘い衝撃が走って、身体がビクビクッて震えて…
むわ〜〜♡って・・・
自分の穴という穴から、大好きなオスを誘う為の…淫魔の濃厚本気フェロモンが溢れ出してしまったのが分かった…
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