私は、さぞ傲慢になっていた気がする。


自分の才能に見惚れていた。


磨いては眺めて、磨いては眺め。


ずっとずっと繰り返していた。


正直、それ以外には興味がなかった。


人は私の欲求を満たしてくれない。


口開けばあーだこーだうるさい言葉だけが怒号する。


故に見下していた。


この世に存在するすべてが、自分に要らない物に感じた。


2024年、僕の手には何も残っていなかった。


金も女も名声も。


持っているのは臭い身体と、舌ばかり打つ舌と、捻くれた思考だけだった。


孤独だ。


微かな不安が何度も胸をめぐる、それが死ぬほど苦しい。


黴臭い部屋で寝転びながらSNSを見て、羨ましい人間がいると頭の中で自分を正当化しようと言い訳を並べ続ける自分が一番醜い。


そして私は、ある芸術を見つけた。


凶器と言っていいかもしれない。


苦しんだ姿を乗せるだけでこんなにも金が手に入るのか、馬鹿馬鹿しくて、最高だ。


など、変哲もないことを思っていた。


何度も自分の物語を描いた。


書いて書いて、また書いた。


目に入るのは毎日、閲覧者数2だけだった。


最初はとてもうれしかった事を覚えてる。


でもお前らにはもう飽きたんだよ。


満たされない。


満たされない。


満たされない。


胸が苦しい。


当たり前のように寝転んでいた部屋に寝転んでいると、自分だけが世界で一人取り残されたような感じがする。


苦しい、苦しい、苦しい。


人の目を見て話せ


学校に行けなかったら、社会生活できないよ


あいつ全然喋らないけどきもいよな


過去に言われた言葉が何度も脳裏を過る。


灰がどんどん小さく成っていく。


呼吸が苦しい。


目玉を取り出してその穴で呼吸をしたい。


僕は、天才だったはずだ。


唯一無二の。


天才だったはずなんだ。


涙が零れてくる。


もう耐えられない。


ナイフをてにとった。

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怒怒哀哀 さくや @sakuya9

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