道
我那覇キヨ
道
ゲームの歴史の中で、有名な女性キャラクターを3人挙げろと言われたら、ストリートファイターⅡに登場した春麗の名はまず間違いなく挙がる。
ストリートファイターⅡの発売は1991年。
ゲームセンターに突如登場したストⅡは、ゲームセンターを飛び越え、社会現象と言えるほどのブームを巻き起こす。
画面に映るキャラクターは大きく、まるで生きているかのようにリアルに動き、ジョイスティックと6つのボタンという複雑なコントローラーも相まって、上達することによってまるでキャラクターとひとつになれるような一体感をプレイヤーにもたらした。
ゲームプロデューサーの岡本吉起は、ヒットするゲームの四つの条件として「見ておもろい、聞いておもろい、遊んでおもろい、繰り返しておもろい」というものを挙げているが、ストⅡはこの四つの条件を完璧に体現したゲームだった。
スーパーファミコンに移植されたストⅡでは、国技館で全国大会を行い、その予選に日本各地のおもちゃ屋で予選が行われた。
予選を通過して国技館に集まった数はおよそ8000人。観客がではない。「我こそは最強」と思い込んだちびっ子、学生、にーちゃん、おじさん達選手が8000人集まったのだ。
手足が伸びる怪しいインド人、半ばケモノと化した悪夢のターザン男、頭突きをしながら地面と並行に飛んでいくスモウレスラー。
ストⅡに登場するそんな奇想天外なキャラクター達の中で、唯一の女性キャラクターが春麗だった。
そして今、2023年にストリートファイターはⅥ(6)が発売され、そこでも春麗は現役で我々の前で勇姿を見せている。
スト6の時代設定がいつかは明示されていないが、仮に今の2025年7月が舞台なのだとしたら、春麗の年齢は57歳だ。
もちろんゲーム内そんな表現はされていない。
表情や仕草などからも、最年長の女性キャラクターであるように表現されてはいるが、30代前半から中盤程度の、綺麗なおねーさんといった姿が今の春麗だ。
リーフェンという弟子もいて、師匠の風格を纏いつつも、今も現役のファイターとして登場してくれている。
正直、ぱっと見の集客だけを考えたら、春麗ではなく弟子のリーフェンを操作キャラクターとするべきだと思う。あるいは、春麗の娘などを登場させるのでもよかった。
往年の名作映画をリブートする際に、主人公を現実の経過時間と同じだけ歳を取らせて、新世代若者と共に活躍させる手法は、それこそ山ほどと言っていいほど例がある。
だけどメーカーであるカプコンの決定は違った。
春麗はママにならないでいいし、リュウだっていつまでも真の強さを求めて歩き続けていい。(どこを歩いてるかって? それはきっとタイトル通り、ストリートを歩いてるんだよ。リュウはいつも道の上にいる)
だってこれは俳優や作家の制約を離れたゲームのキャラクターなのだから。
リュウ、ケン、本田、春麗、ガイル、ブランカ、ザンギエフ、ダルシム……。
ストⅡに登場した操作キャラクターは、スト6でも最初から遊ぶことができる。
俺たちプレイヤーの往年の相棒は、今も相棒でいてくれるのだ。
もちろん、今のセンスで作られた新しいキャラクターもいる。これから遊ぶ若い人達はそっちを相棒にしてもいいだろう。
ゲームだから体格差や年齢差を越えて、すっかりジジイになった親父と遊んだり、ボカロ曲の繊細な歌詞に自己投影する中学生とだって、遊べる。
もうストⅡから30年以上経っているけれど、俺たちは未だに波動拳だ、スーパー頭突きだ百烈キックだと騒いでいる。
俺たち、と複数形で語ることができるのは、きっと当たり前なことなんかじゃない。
みんなありがとう。
対戦よろしくお願いします。
道 我那覇キヨ @waganahakiyo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます