第3章 第8話「氷上の死闘」


敵AC部隊20機。

その巨体が、吹雪を割って迫る。氷面が軋み、衝撃波が地を伝って響く。


「囲まれるぞ、散開して迎撃!」

総士の声に、全機が反応する。


【VELTINE‐03】がまず高台へ跳躍。

綾杜は即座に狙撃体勢をとり、冷静に照準を定めた。


「左端。重装突撃型、排除する」


――ドン。


狙撃弾が、正確に敵機の関節部を貫き、雪の中に沈めた。


「一機撃破。援護継続」


「サンキュー、綾人!」

【SYLPHID‐04】の裕太が滑り込むように前線に飛び込み、バズーカを発射。

着弾と同時に、ジャミング信号が戦場を覆う。


「センサー撹乱、今のうちに!」


「任せろ」

佑真の【ZAIN‐01】が低く構え、白銀の地を疾走する。


右手に握る《ZNソード》が、敵機の装甲を切り裂く。

雪を弾き飛ばし、切先が火花を散らす。


「3機目!」

ZAINが空中に跳躍し、後方からの砲撃をブースターでかわす。


――そのわずかな瞬間。


ロシア側ACの一機が、右から強襲を仕掛けてきた。


「佑真、右だ!」

総士の声に反応し、佑真は左腕のピストルを発砲。

弾丸が関節部を弾き、敵の動きが鈍る。


「助かった、総士!」


【NOESIS‐02】は上空から敵部隊の動きを完全にトレースしていた。

AIが即座に武装と行動傾向を解析し、仲間たちのHUDに情報が流れていく。


「右側に重装機3機。動きが鈍い。先に潰すぞ、援護頼む」

総士がライフルを放つと、ZAINとSYLPHIDが同時に側面から切り込みをかける。


敵は確かに強かった。だが――


「俺たちももう、ただの“高校生”じゃねえんだよ」

裕太が叫ぶ。


仲間との連携、そして武装の進化が噛み合い、確実に敵を削っていく。


だが。


「……おかしい」

綾杜が微かに呟いた。


「残り機体数、最初の報告と違う。……この中に、“本命”はいない」


その瞬間、雪原の奥から、“それ”が姿を現した。


通常ACを凌駕する、異常なシルエット。

二重構造の装甲、巨大な熱源、そして黒く塗り潰されたコクピット。


「……これは」

総士が声を失った。


ロシア軍、特殊実験型AC――《レイヴン級》。

“本物”が、牙を剥く。

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