習作:断章
楓雪 空翠
7/4 Enough on Numbness
空虚な表情を浮かべた僕の顔が、分厚い硝子窓に映り込んでいる。その虚像を隔てて広がる、滲んだ水彩画のような星月夜を、ぼんやりと眺めていた。瞬きをするたび、深淵のような紺青が朝の眩さに染まっていく。――もうすぐ、夜が明ける。
すっかり力の抜けた身体を動かし、彼女の前に向き直った。寝息の音はとても静かで、心音計にすら掻き消されてしまうほど、脆弱に浮かんでいた。彼女だけに聞こえるように、そっと名前を呼ぶ。何度も、何度も繰り返して。声にならない声が、無機質に響く機械音に吸い込まれる。微かに震える右手を差し出して、華奢な彼女の指に絡めると、仄かな、しかし確かな温かみを感じた。か細く脆いその脈拍が、僕の手に縋っているようで――その尊さに共鳴した僕の吐息は、静寂に染まった夜の空気に振動した。頼りない掌で握り締めた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます