第12話

「俺が興味あるのはあんただけだ。あんたの家にはひとっかけらも興味ねぇよ」


まるで、私が何を不安に感じているのか全て見透かしているかのように、ずっと誰かに言って欲しかった言葉ばかりを並べるこいつ。


そんなこいつを信じていいのかダメなのか。今の私にはわからない。


けれど、


「だったら証明しなさいよ」

「証明?」

「そう、証明。あんたが本当に私にしか興味がないっていうんだったら、それを証明して見せてよ」


いつの日にか、こいつを信用出来たらいいなと強く思ったのは、きっと気の迷いではないはずよ。


「証明って、一体どうすりゃいいんだよ。あんたはどうしたら俺の気持ちを信じてくれんだ」

「そんなの、決まってるじゃない」


こいつが信用出来る奴か否か、判断するにはこれしかない。


「私の執事になりなさい」


そう口にした瞬間、私の背中に腕を回していた奴の大きな笑い声が部屋中に響き渡った。


「ちょっと、あんた何で笑ってんのよ。」


意味わからないわ。私が真剣に話しているのにいきなり笑い出すなんて。


「いやいや、笑うなって方が無理だろ」

「何よ、文句でもあるわけ?それなら信用しないわ。今すぐここでさようなら、よ」

「文句っつーか、あれだよ、あれ。あんたの頭ん中見てみてぇなっつーかなんつーか。あんたどんな思考回路してんだ、いやマジで」

「だって、そうするのが手っ取り早いじゃない。ずっと一緒にいればあんたが信用出来る奴かどうかなんて、嫌でもわかるわ。それに、あんた今家に帰れない上にお金もなくて困ってるんでしょう?それなら、うちで働けばいいじゃない」


ほーうら、これで全部解決するでしょう?


「へぇ。この短い時間でそんなことまで考えてたって訳か」

「当前よ。ついでに三食宿付き、時給はあんたの希望額を通すわ。これ以上の高待遇ってある?」


これで文句は言わせないわよ。


「わかったわかった、もういいよそれで」

「なら決まりね」

「あぁ、決まりだ。あんたの側に居られるっていうなら、この際執事でも何でもやってやるよ」


未だ微かに笑い続けているこいつはやっぱりちょっと憎い。


けれど、それでもこの時確かに私は、こいつの側に居たいと思った。

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