第一部あとがき

 第一部「それぞれの道」まで、お読みいただきありがとうございます。


 この物語を書き始めたとき、私が目指したのは「どこか遠くの現実」でした。


 魔法が存在する世界。でも、そこに生きる人々の悩みや選択は、私たちの世界と変わらない。才能と努力。期待と挫折。友情と孤独。犠牲と覚悟。理想を追う者と、現実に向き合う者。


 ファンタジーでありながら、どこかで息づいている世界。


 書き進めるうちに、物語はより大きなスケールへと広がっていきました。アストラルコレクション仮説。三百十七人の犠牲。記録局の使命。そして、エリアスの革命。


 当初の想定より遥かに重く、複雑な展開になったかもしれません。


 この物語の世界観を構築する上で、私が参考にしたのは量子力学や学問の歴史でした。


 量子力学は、常識を覆す理論でありながら、厳密な数学と実験によって証明されてきました。アインシュタインやボーアたちの論争。観測問題。不確定性原理。誰も「なぜそうなのか」を完全には理解できないまま、それでも理論は機能し続けている。


 学問の歴史もまた、権威と革新の繰り返しでした。ガリレオの地動説。ダーウィンの進化論。彼らは異端視されながらも、真実を追求し続けた。


 カノンの数式魔法は、そうした「常識を覆す新しいアプローチ」として生まれました。エリアスの革命は、学問の民主化という、現実の歴史でも繰り返されてきたテーマです。


 第二部では、エリアスの構想がゆっくりと——時には予想外の形で——実現していきます。


 カノンたちは、様々な経験を経て成長していくでしょう。リアナは自分の道を、ミレーネは自分の答えを見つけていきます。


 気づいている方もいるかもしれませんが、何も終わってはいません。


 ただ、第二部を始める前に、しばらくお休みをいただきます。


 丁寧にプロットを組み立て、キャラクターたちの成長を描き、第一部で築いた世界をさらに深めていきたいと思います。


 気長にお待ちいただければ幸いです。


 最後に。


 カノン、リアナ、ミレーネ。エディ、エリアス、ヴェルニカ、マルクス、アルヴィン。そして三百十七人の名前。


 彼らと共に歩んでくださった読者の皆様に、心から感謝を。


 第二部で、またお会いしましょう。

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