第13話

「私の願いが叶うように、佑耶も願ってくれるんでしょ」

「美咲、いいのかよ。好きな奴じゃなくて。俺が願ったらそれ、本当に叶うんだぞ」

「私の好きな人だからいいの」


短冊に書いた名前を指差して私が言うと、佑耶は目をきょとんとさせた。


「は?」

「今までの私の願い事だって、叶ってたし」

「美咲、何言って……」

「でも本人に伝わってなかったみたいだから、お願い事をグレードアップしてみた」


意味がわかった途端に顔を真っ赤にさせた佑耶に、私は笑いが止まらなくなる。


「なんだ、それ。」


真っ赤な顔して小さな声でぼそりと呟く佑耶。

こんな佑耶、初めて見た。


佑耶と私は生まれたときからずっと一緒にいるけれど。

きっと、まだまだあるんだろうな。

私が見たことない佑耶の顔。

私にわからない佑耶の気持ち。

きっとまだまだたくさんある。


だけど良いんだ。

それで良いんだ。


「ねぇ、佑耶。この願い事も叶うかな?」

「……叶うんじゃねぇの?」


もしも願いが叶うなら、時間もまだまだたっぷりあるから。

これから知っていけばいいんだ。


「短冊に書いた願い事が、もしも本当に叶うなら、私の願いはーーー」


昔から変わらない願いを私が口にすると。

佑耶は昔から変わらない、私の大好きな笑顔で優しくそっと微笑んだ。

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