第12話

「美咲、何笑ってんの。そんなにそいつが好きなのか?」

「うん、好き」

「俺、そいつのこと今すぐぶん殴りたいんだけど」


真顔でそんなことを言ってのける佑耶は、やっぱり未だにわかってないんだ。


「佑耶って、私のこと本当にわかってないよね」

「わからず屋だなんだと言われても、俺は反対だ。絶対反対だ」

「佑耶、お父さんみたい」

「俺は美咲の父さんじゃなくて幼なじみだろ」

「私、佑耶の幼なじみは嫌だなあ」

「幼なじみですらいられないなんて言われたら、俺生きていけないんだけど」


捨てられた仔犬のような顔をする佑耶の前の席に座って、私は鞄からそっと短冊と筆箱を出した。


そうして短冊に願い事を書いた。


黒色のマジックペンで、文字が消えないように、気持ちが消えないようにしっかりと書いた。


佑耶が見ている目の前で。

今年は佑耶にもわかるように。

ちゃんと佑耶に届くように。


「何、書いてんの」

「願い事」

「願い事って、それ……」

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