景色がゆらめくくらい暑い夏の日、幼い息子さんの提案により炒飯なぞというこってり料理を食べにゆくこととなった主人公は、炒飯を求めて古臭い店構えのラーメン屋を訪れるが……。
暑さや向日葵の痛さなど、
読むとノスタルジーな夏の感触がよみがえります。
最初は微笑ましい親子の心温まるお話だと思いこんでいました。息子を見つめる母親のまなざしが、とても優しくて魅力的なのです。
しかし読み進めるうちに、主人公をとりまく環境に夏色の不穏な影が差し始め、こちらも不安な気持ちにさせられていき、もしかして怖いお話なのやもと思いつつスクロールしていき……最後にあふれた感情はやるせなさでした。
やるせないけれども夏の白昼夢に魅せられたような美しい作品でした。
あと炒飯がうまそうでうまそうで夜中なのにお腹が鳴りました笑
読み終えた後、なんて恐ろしい作品なのだろう、とまず思いました。
この作品、最初から最後までチャーハンがたくさん出てくるので、チャーハンを中心とした物語だと言えると思うのですが、それなのになぜここまで重厚で胸を打つ作品に仕上げられるのか……。
あと、文章力が凄まじくて、情景がすごく鮮明に浮かんでくるんですよ。
この作者は天才だと思います。
いやはや、恐ろしい作家だ……。
さて、ここまでだと、ただの飯テロ作品だと思われかねないので、もう少しだけ詳しくこの物語についてお話ししましょう。
息子にラーメン屋さんのチャーハンを食べに行こうと言われた主人公は、ある個人店に入る……というシーンからこの物語は始まります。
そこで、彼女はチャーハンを一つ注文します。
すると、高級料理店で出されるようなクオリティのチャーハンが出てきて、主人公は感動してしまいます。
そして彼女は思い出しました、過去にも同じ味のチャーハンを夫と食べたことを……。
というのが前半部分の大まかな流れなんですが、これ以上は語りすぎになってしまう気がするので、ここまでにしておきます。
さて、この物語の前半の概要を書きましたが、皆さん、私が書いたこのあらすじにどこか違和感を覚えるところはありませんか?
あるのでしたら、その違和感を抱いたまま、この作品を実際に読むことをお勧めします。
どうでもいいかもしれませんが、夏は悲しい季節だという印象が私にはあるんですよね。
もし私と同じイメージを抱いている人がいたら、この作品はあなたにとって、この上なく『夏』を感じさせる物語だと思います。
非常にクオリティが高い作品なので、是非皆さんにも読んでいただきたいです。
きっと私のように、チャーハンを食べるたびに、思い出してしまうような物語になるでしょうから……。
人には、心に残る店があると思う。
わたしの場合は、
『朱雀(しゅじゃく)』なのだ。
家から歩いていける距離にある町中華。
店に入ると、テーブル席とカウンター。
奥に座敷席が2つ。
座敷席には大きな丸テーブル。
真っ赤な丸テーブルは、テーブルの上に回転する丸い回転台がついていた。
子どものとき、その回転台の料理をクルクルと意味もなく回し、怒られた覚えがある。
その店のチャーハン。
ラードでギトギト。
味の染みたチャーシュー、卵、長ネギだけのシンプルな構成。
チャーハンについてくる醤油スープは、油球が浮いて、塩っぱい。
わたしがチャーハンを食べるとき、
このチャーハンが基本となる。
朱雀より、うまいか、まずいか。
しかし、朱雀よりうまいチャーハンにはまだ出会っていない。
このお作品に出てくる、
『夏色のチャーハン』
グッときた。
朱雀とは、対極のチャーハン。
ああ、チャーハン食べたい!
けど、それは幻の味。
朱雀。
店主が亡くなり、今はもうない。