ダンボールで嫁が送られてきた〔不定期更新〕

池田 春

第1話この荷物はクーリングオフは受け付けておりません

「はあ…疲れた…」


突然だが…パン工場で働いているのだが、あれは人間がする仕事とは思えない。

延々に流れてくるパンに単純作業が故に時間の流れが遅く感じる。

ミスって機械の動きを止めれば、先輩達からの厳しい視線とヤジが飛んでくる。

単純作業だから全て機械化すればいいさえ思うのだが、俺達人間は機械を導入するより大分人間の方が単価が安いから今だに工場のラインは人間が作業するのが常識だ。


両親は家業の漁師になることを望んでいたが、俺はどうしてもこの何もない島を離れたくて、両親の反対を押し切って高校を卒業と同時に生まれ育った島を離れてまあまあ都会の方で就職し一人暮らしをしている。


一人暮らしを始めた当初は生まれ故郷の何もない島内では見れない。街の色々なお店に惹かれて色んなとこをほっつき歩いていたが、最近では仕事をするだけで疲れ果てて。何もする気が起きない。


こんな仕事ととっとと辞めたいが、辞めたら家賃も払えずに行き倒れになってしまう為、それもできない。

仕事を始めて2年高校の頃はお金を稼ぐことがこんなにしんどいとは思いもしなかった。


今日は予定通りにパンの製造個数が達成出来て、残業もなく定時で帰ることが出来た。


俺は疲れて覚束無い足で上手く鍵が鍵穴刺さらずガチャガチャと不器用な手でなんとか鍵を差し、鍵を開けることに成功する。俺は仕事で汗を掻いて肌がベタついているのも気にせず。一旦体を回復させる為にソファに倒れ込む。


はあ…飯を食べるのも億劫だ。一応帰る途中でコンビニで唐揚げ弁当と酒を買っているが、後から食べよう。最初の頃は絶対健康的な生活してやると意気込んで無駄に高い料理器具を揃えたが気づいたら埃を被っているという悲惨な状態だ。


部屋だってそこら中にコンビニ弁当の残骸や酒の空き缶が転がっている。洗濯物だって疲れて全く出来てなく、山積みになっている。


本当に世の中の一人暮らししている人で、家事も完璧にこなしながら、仕事もしている人たちは超人だと思う。現に俺は仕事で手一杯だ。


ソファに倒れ込んで15分が経ったあたりで…


ピンポーンとなる。


俺はソファから怠さが残った体に鞭を打ち。のそりと起き上がる。こちらに移り住んで友達と言える存在は皆無なので友達が遊びに来たという線はない。ということは配達だが、何か注文しただろうか?。


俺はとりあえずドアを開ける。


「すみません、お届け物です!」


案の定、配達のお兄さんが立っていた。その傍には人1人が入りそうな大きなダンボールが台車に乗せてある。ますます疑問だ。本当に俺の荷物なんだろうか?。


「判子、貰ってもいいですか?」


俺はとりあえず、判子を押す。受け取って中身を見たら何かわかるだろうの精神で…


「荷物が少々重たいので家の中まで運びますね」


「すみません、よろしくお願いします」


「はい!」


配達のお兄さんは大きいダンボールをものともせずに軽々と運んでリビングに置いてくれる。


「では、あざしたー」


配達のお兄さんが去っていたので、俺は見覚えのない謎の大きなダンボールとリビングで1人対面する。


「よし!とりあえず開けるか!」


俺はとりあえず厳重にガムテープが封をされているのでカッターで少しだけ切り込みを入れてから中身を開く。


中身は…………気持ちよさそうに眠っている女の子だった。


は!?


なんで、なんで、なんで?


一瞬、人形かもと思っていたが、女の子の胸が上下していることから息をしていることが読み取れ人間ということがわかる。


え!?俺なんかの犯罪に巻き込まれようとしている?。

人身売買で買われた女の子が間違って俺の所に運ばれてきたの?


てかこれ警察案件だよね


とりあえず、警察に電話をしようとスマホを操作していると…


女の子の目が開かれる。


「は!?私寝ててすみません!不束者ですがよろしくお願いします!」


ダンボールの中から出てきた女の子はフローリングの上に正座をすると、頭を下げてからそんなことを言い出す。


「???」


更に意味がわからない。この女の子とは初対面のはずだが、腰まで伸びる綺麗な黒髪に白い綺麗な肌は何処かのお嬢様みたいな清楚さだ。うん!こんな綺麗な子は知らないな。


「えっと?誰かな?」


「日和です!将暉お兄ちゃん!」


「マジで!?あの日和ちゃんなの!?」


名前を聞いてピンと来た。俺の家の隣に住んでいた女の子だ。島内は子供が少ない為、俺がよく遊んでいた。。俺と日和ちゃんは4歳違いだから今年で16歳のはず、女の子は少し合わない間に変わるとよく言われるが、2年間会わないだけでこんなに変わるとは驚きだ。


「でも、なんでダンボールから?」


「おばさんがダンボールで送られてきたら、将暉お兄ちゃんびっくりするだろうって」


「いや、確かにびっくりはしたけど、女の子がダンボールから出てくるとかなんかの犯罪に巻き込まれたかと思ったわ」


うん、本当に心臓に悪かったわ。


「どうして日和ちゃんだけ来たの?」


そうなのだ。日和ちゃんは確か、島内ある唯一の高校に通っていたはず、全校生徒20人とかいうふざけた人数ではあるが一応しっかりしている。おばさん〔日和ちゃんのお母さん〕も日和ちゃんを可愛がってたからこんな遠い所まで1人で送らないはずだ。


「将暉お兄ちゃんこれを母とおばさんからです」


日和ちゃんから手紙を受け取ると開いてとりあえず読んでみる。


『バカ息子へ

日和ちゃんはそちらに届いた?。いきなりでびっくりしたでしょ?。ダンボールで日和ちゃんが届いたら面白いかなって思って送ってみたよ。あー本題なんだけど首長のバカ息子と日和ちゃん無理矢理結婚されそうになってたからあんたの所に避難させたわ日和ちゃんのことよろしく頼むわね

後早く初孫みたいから日和ちゃんを嫁に貰いなさい

                 母より 』


『おばさんより

娘のことよろしく頼むわね!柚子ちゃん〔俺の母〕に相談したら、昔から日和は将暉くんのお嫁さんになる!って言ってたの思い出して息子の所に送ればと柚子ちゃんに言われて、そちらに送りました。柚子に手を出してもいいけど、責任はちゃんと取ってね! 

              おばさんより 』


読み終えた。俺は頭を抱えた。


「いや、いきなり嫁言われても…無理だろ日和ちゃんまだ16歳だぞ…」


俺はいきなりのことに1人愚痴る。


「ふぇ…困ります!困ります!嫁に貰って頂かないと無理矢理あの人と結婚させられちゃいます!なんでもしますから!!嫁にしてください!!」


日和ちゃんは俺の独り言が聞こえてたらしく。焦ったように俺の体に縋り付く。


「えっと、日和ちゃん一旦落ち着いて…」


「じゃあ、嫁にしてくださいますか?」


日和ちゃんは涙目で俺の顔を見つめる。


「いや…えっと…」


日和ちゃん詰め寄られるが日和ちゃんは未成年なので頷くのは躊躇われる。それに未成年を家に上げていること自体不味いような気がする。帰ってもらった方がいいような、俺は人を養えるような余裕がない。


「ひっく…お願いします…将暉お兄ちゃん…本当にお願いします」


「日和ちゃん頭を上げてくれ!」


「いえ!頷いて下さるまでずっとこうします」


とうとう、土下座までしてくる。何故だろうか?可愛い女の子に土下座をされると罪悪感が倍増する。俺は最終的に我慢出来ずに折れてしまった。


「日和ちゃん、わかったから頭を上げてくれ!」


がバ!っと勢いよく頭を上げた日和ちゃんの顔を向日葵が咲いたような綺麗な笑顔だった。


「不束者ですが、これからは将暉お兄ちゃんの嫁として頑張りますね」

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