【ショートショート】お妃様の 魔法の鏡

ひの 真綾

お妃様の 魔法の鏡

「みな、お下がり。私が呼ぶまで、誰も部屋に入れるんじゃないよ」


 ふん。やっと全員出て行ったか。

 では今日も。


「鏡よ鏡。この世で一番美しいのは誰?」

――それは白雪姫


 そんなはずはないでしょう。聞き間違いかしら。


「もう一度聞きます。

 鏡よ鏡、この世で一番美しいのは誰?」

――それは白雪姫


 いいえ、ありえません。


「最後のチャンスです。しっかりと答えなさい。

 鏡よ鏡、この世で一番美しいのは誰?」

――それは白雪姫


 はああああぁぁぁっ!?


 いやいやいやいやいやいや、それは、ない。

 確かに白雪姫はこの城に住んでいて、肌は雪のように真っ白で、唇は血のように真っ赤で、髪と瞳は真っ黒で。

 国中の噂になってしまうほど、容姿は有名だけれども!

 その顔ときたら、いったい誰に似たのやら。残念を通り越して、もはやお笑いの顔芸レベル。お化け屋敷のスカウトまで来ちゃうけど。

 絶対に、美しい、とか、では、ない!


 はっ。

 もしかしたら。

 鏡は、左右が逆に映るから、質問への答えも逆なのかしら。

 どうやったら確かめられるだろう。


 あ、そうだ。


「鏡よ鏡、この国で一番お金持ちなのは誰?」

――それは、橋の下に住んでいる乞食


「鏡よ鏡、世界で一番年を取っているのは誰?」

――それは、今、生まれたばかりの赤ん坊


 ほ~らね。全部逆なんだわ。

 ふう。

 この世で一番美しいのが白雪姫、なんて言うからびっくりしちゃった。


 ん?


 そういえば、この鏡、昨日まで

『この世で一番美しいのはお妃様』って言っていなかった――!!!?


 ムキ――‼ 

 許・せ・な・い――‼

 

「誰か! 今すぐ、狩人を呼んでおいで!

 この鏡を、森へつれていって、殺しておしまい‼

 証拠として、この箱に、鏡の破片を入れて持ち帰ってくるんだよ!」

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