第15話

 ブクはむぎゅーとしたもんに包まれたみてーに、顔の締まりを崩してね。

 クロムはそこで、ふと、実験について思い当たっただ。ぽん!と、実験には失敗がつきもの。実験について冗談をゆう事もあんだろーよ。そうゆうのも含めると!、なかなか賑やかな実験の世界に、俺は住んどるケド。そういうのは、隠されて、シューセイされねばならんのは、人を元気付けたい志が、喜んでもらいてー気持ちの入った仕事が、したいと、思っとるけー。実験を成功させて、格好良く宣伝して。足りなかったら補って、失敗は隠して、願懸けして、墓参りして。なのに俺は実験とゆう言葉を冷たく使っただ。いけん。さあ、飲み物をあげてって願い、実験みたいに、実験がある世界みたいに成功させんとな。

 クロムは二つあるコップのどっちをブクに用意するかなーと、思っただ。火トカゲのまんまるいコップは子供っぽ過ぎるかなー?。茶碗のほうが、飲みやすいかな。

 その時ブクが、お茶あ、と、呼びかけたのだが、振り向いたクロムはゴッ、と、肘をレトロな冷蔵庫の角にぶつけた。持っとる陶器を落とさぬよう持ったまま、声にならん叫びを発して頭を振ると、再びゴッ、頭をレトロな冷蔵庫に今度は打ちつけた。クロムは歯を食いしばって、叫び声をこらえ、陶器を落とさぬように集中した。クロム!、大丈夫?と、ブクが台所を、ハラハラしながら覗いた。何が?と、クロムは無表情に答えた。

 やがて、二人はお茶を囲んで座った、だ。クロムは考えてた、いささかのハプニングはあったが、と。そして、実験成功だっちゃ、と、ゆうただ。ブクが不思議そうな顔をして、実験?、と、尋ねた。次のない一度きりの実験かも。

 二人の前に並ぶお茶。それは、お茶とはゆっても、抹茶。ちょっと格式張った感じがするね。二人とも、作法には詳しゅうはない。間違ごうとるかも知れぬけえ、詳しゅうは、述べんが、二人とも、一所懸命に碗を回して、ちょっと厳かだった。

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