第3話

「ふーん。それで、その高桑くんってのは、太ってるの?痩せてるの?」


「太ってはいませんが、結構ガッチリした体型です。学生の時、アメフト部だったということなんですけれど、いかにもアメフトって感じの体です。」


「ふーん。つまり、お前とは全然違うタイプなんだな。」


「はい。」

私は、小太りで、とてもスポーツが得意そうなタイプには見えませんから、高桑くんとは、全然違うタイプだと思います。


「あと、もうひとつ。おまえの、そのgmailのメールアドレスってのは、誰が知ってるの?」


「本当に数人しか知りません。昔、学生の時のサークル仲間で集まるときに、そのための連絡を取り合うために作ったアドレスで、そのメンバーしか知らないはずです。」


「その中に、お前のことを恨んでいるやつは?」


「わかりません。たぶん、いないはずです。」


「そうか。じゃあ、おまえは、何も心配しなくてもいいんじゃないか?」


え?うつむいていた私は、思わず顔を上げ、義兄と目線があいました。

私が、この件について相談していた相手は、私の義兄、私の妻の姉の夫です。彼は、もともと、柔道家でもあり、胆力のあるタイプなので、こういう不安の相談相手にちょうどいいかと思ったのでした。


「この話、何から何まで変だ。第一に、お前のその小説、お前の子供の頃の同級生たちが、それを読んで、自分のことだなんて、わかると思うか?」


「でも、私は、本名で書いていたわけですし。。」


「そうは言うけれどさ、一見さんの読者には、そのペンネームが本当の本名だなんて、わからないはずだぜ。その小説の中には、他に、はっきりと地名がでてくるわけでもないし、昭和何年とか出てくるわけでもないんだろ。だったらさ、わかんねぇよ。自分と似たような体験したやつがいるな、って思う程度だと思うよ。」


「しかもさ、それで、自分のことだって言ってきたやつは、架空のキャラクターだってんだろ。」


「でも、私が忘れているだけかも。」


「お前の年で認知症なんて、めったにねえよ。状況を聞くと、記憶喪失らしくもない。」

「だとしたら、可能性が高いのは、お前を、別の誰かと勘違いしているのか、もしくは、誰かが、そのNになりすましてイタズラしているか、だ。」


「では、高桑くんの件は」


「たぶん、偶然だろ。さっき、確認したけれど、お前と高桑くんは、見た目も、雰囲気も違いすぎる。人違いで犠牲になったにしては不自然だよ。子供の頃のお前を知っているやつが、高桑くんをみて、お前の成長した姿だと思うことは、たぶん、ないはずだと思うぜ。」


「でも、不安です。」


「まあ、さ、俺は、これ、いたずらだと思うぜ。だれか、お前のメールアドレスを知っているやつで、おまえが小説投稿しているって知っているやつはいないのか?たぶん、そいつがいたずらの犯人だと思うんだけどな。」


「たぶん、いないと思うんですが、よくわかりません。」


「まあ、とりあえず、気持ちを落ち着けてからさ、それから、いたずらをしているやつをつきとめる方法を考えようぜ。とりあえず、そのビールのめ。さっきから、全然飲んでねえじゃねえか。」

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