迷宮入りと多才な娘

第一話 引きこもりの才女

「ヨンジュ!注文よ!」


キム氏の屋敷。

若い娘が屋敷の一角の部屋へと走る。

部屋の中からちょっと顔を覗かせたその妹は、顔を渋らせる。


「えぇっ!またですか?」



妹は、そう言って、手元に目線を下ろす。

この娘はヨンジュ。

両班キム氏の末娘。

秘密で主にノリゲなどを作る装飾職人をしている。

ヨンジュはため息をつきながらぐるりと部屋中を見渡す。

作りかけの装飾品。

山のように積まれた依頼の文。

きっとあの半分はまだ製作中だろう。

これはやばいな。

そんなヨンジュの気持ちを察したのか、ヨンジュの1番目の姉、ジユンは、


「まあ大変よね、、。期限はもうちょっと伸ばせるように言っておくわ」


と言ってくれた。


「ああ。ジユン姉さんは良い人だよほんと」


「にしても、ヨンジュってほんと引きこもりなの勿体無いわね〜」


「ちょっとジユンお姉さま!」


「こんなに美形で才気に溢れているのに。外へ出たらそこらのソンビを全員掻っ攫えるでしょうね。あーでも、可愛い妹を取られたくないなあ」


「ソンビには様をつけたほうがいいんじゃないですか?ジユン姉さま?」


「良いのよ。私より下ならね」


さすが両班の長女。

ジユン姉様はすごいなあ。

肝がすわってる。


「そういえば、お父様たちは?」


「ああ。なんか、王様から呼び出しって」


「へえ。なんだろう…」


「まあ仕事のことでしょう。それより、ちゃんとやるのはやりなさい!職人なんだから」


そう言ってジユンは去っていった。


「はあ、、、、」


こう長々とやってもなあ。


いっそ本気出してやろう!

そうしてヨンジュは、また作業に取り掛かった。


それから結構経った時、


「ヨンジュ!進んでる?」


「ソヨン姉さま!」


ソヨン姉さまは、私の2番目の姉だ。


「うわあ!さすがヨンジュ!これとか!すごく綺麗!」


気がつくと、姉さまは、完成した装飾品を手に取って、まじまじと見ている。

ソヨン姉さまはジヨン姉さまとは性格が真反対で、明るくて、男勝り。

昔は、父上によく怒られていたりもしたなあ。


「あっそうそう!ここの部分読んでくれる?なんて読むんだったか忘れちゃったの」


そういうとソヨンは、本の一部を見せてくる。

全く、妹に読めない漢字を読ませるってどうかしてる。


「えーとそこは、、、」


「あー。確かに。そういう風だった気がするわ。仕事中悪かったわね。ありがとう」


そういうと、ソヨンは、立ち上がる。


「いえ、全然。いつでも聞きに来てください」


そう言うと、


「それじゃあ、頑張ってね」


と言って去っていった。



はあ。

まだまだやらなきゃ。

まだ、依頼の文は山を作っている。

そういえば、今日はがあるはず。

また忍びで行くしかないなあ。


ヨンジュは、そう思いながら、作業を進めていた。



驚いたことがあったのは、それから三刻ほどたった時。


「ヨンジュ!大変!」


興奮気味のソヨンが急いでこちらへと走ってきた。


「ソヨン姉さま!何事ですか?」


「それがね、、、、、」











_________________

次回、7月30日投稿予定!






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