最良の結末

「「-…っ」」

 すると、王女は心底不思議そうな顔をしてこちらを見ていた。…それを見て、今度はこちらが驚いてしまう。

「…分かったわ。…ただし、チャンスは一度だけしか与えない」

「…っ!は、はいっ!必ずや、一度で成功させてみせますっ!」

「寛大なるお心に、感謝致します」

「…では、行動に移りましょう。

 -光栄に思いなさい。私と私の『親衛隊』が貴方の露払いをしてあげるわ」

「…っ!ひゃいっ!」

 最後に凄い事を言って、王女は先にテントを出た。…そのせいでノワールはガチガチに緊張したので、内心ため息を吐いてしまう。

「……が、が、がんばら、ない、となっ!」

「…大丈夫ですよ。僭越ながら、私がエスコートしますので」

「……っ!……た、助かります」

「では、行きましょう」

「……はい」

 肩に手を置きながらそう言うと、ノワールは少し落ち着きを取り戻した。なので俺達は、意を決してテントを出る。

 すると、既に両殿下のみならず『親衛隊』が整列していた。


「『主役』が来たわね。…じゃあ、さっき伝えた通りに動いて」

『はいっ!』

 第2王女が命じると、セレナ殿下と親衛隊は迅速かつ華麗に行動を始める。そして、程なくして彼女達はコピー達を取り囲んだ。

「-攻撃開始っ!」

『はいっ!』

『グギャアアアアッ!?』

 第2王女か勇ましい号令を出すと、直後彼女達は攻撃を始めた。…本当、凄い光景だ。

 彼女達の一斉攻撃に、コピー達は次々と討伐されていく。正直、ちょっとモンスター達が可哀想に思えて来た。

「-ボルトロード」

「…っ!?」

 やがて、コピー達が減り『鏡』が見えて来たので俺は準備を始めた。…まずは、ノワールの為の『道』を作ってやる。

「殿下が合図を出したら、その上に乗って下さい」

「…わ、分かりました。…っ-」

 すると、ヤツは両手に魔力を集め小声で言葉を紡ぎ始める。…確か、召還にも送還にも呪文があった筈だ。


「-トルネードボムッ!」

『ピギャアアアアッ!?』

 一方、『露払い』の方では風の手榴弾により飛行モンスター達がバランスを崩す。…そのおかげで、遂に鏡への道が開けた。

「-行きなさいっ!」

「「…い、イエス、ユアハイネスッ!」」

 当然、第2王女は俺達に号令を出しノワールの奴は道に飛び乗る。それに合わせて、俺も足に雷の聖霊を集めた。

「うわあああっ!?」

「ボルトスパートッ!」

 次の瞬間、ヤツは凄い速さで鏡に向かって突撃して行く。勿論、俺は直ぐに駆け出し直ぐにヤツと並走した。

「集中して下さいっ!」

「…あ、ああっ!」

『グギャアアアアッ!』

「…まあ、だよな-」

「-ボルトアローッ!」

 だが、鏡の方も即座に新たなコピーを生み出した。なので、俺はソイツに狙いを定めるが直後ソイツの頭に雷の矢が刺さった。


「私の大切な弟の、邪魔をするんじゃありませんっ!」

 消えゆくコピーに、姉上は怒りを顕にしながらそう言った。…あの人を起こらせるのは、絶対止めておこう。

「『-写しの魔物よっ!汝の在るべき場所に帰れっ!』」

 そうこうしている内に、ノワールは鏡の元にたどり着く。そして、呪文の最後の節を告げつつ手から見覚えのある白い光が放たれた。

「ぐううううううっ!?」

 そのまま光は鏡の魔物を包み込むが、そう簡単には送還出来なかった。まあ、あの魔物は高ランクのモンスターだから仕方ない。

「-っ!させるかっ!」

 ノワールの奴が必死になるなか、鏡の魔物は突如鏡面から『腕』を出した。なので、俺はその悪あがきを防ぐべく行動する。

『-ガオオオオオッ!』

 だが、その前に真後ろから聖獣が飛び掛かり巨躯でソイツを踏み付ける。…当然、派手に鏡が割れる音が鳴り響いた。


「さあ、今ですっ!」

「…っ!はあああああああっ!」

 そして、聖獣の上に乗るセレナ殿下がそう言うとノワールは魔力の出力を上げる。…するとモンスターの下に魔法陣が展開し、直後ソイツはそれに飲み込まれるようにして消えた。

「………っ」

「…おっと」

 安堵していると、ノワールは糸が切れたように前に倒れそうになった。なので、俺は直ぐ支えてやる。…どうやら、今ので魔力を使い果たしたようだ。

「…だ、大丈夫ですか?」

「…ご安心下さい。ただの魔力切れですよ」

「…そうですか」

 それを聞いたセレナ殿下は、心底ホッとした。…後でノワールに教えてやろう。間違いなく、幸せそうな顔で浮かれるだろうから。


「-ご苦労だったわね」

「…っ!お姉様も、お疲れ様でした」

「…ありがとうございます」

「…今、救護の先生を呼んだので間も無く来るわ」

「重ねて、ありがとうございます」

「……」

 こちらが頭を下げると、第2王女はまた不思議そうな顔でこちらを見た。…もしかしてこの人は、『理由』を聞きたいのか?

「…1つ聞きたいのだけど、良いかしら?」

「…は、はい。何なりと」

「…何故貴方は、彼を助けたいと思ったの?」

「…っ。…そうですね。

 -ここで彼を見捨てたら、いつか『後悔』すると思ったからです」

 予想通りの質問に、俺は慎重に言葉を選びつつ本心で答える。…この場は、なるべく本心を口にした方が良いと思ったからだ。


「…後悔?」

「…あれ程の『高ランクモンスター』を召還出来た彼は、いつか『この国』にとってなくてはならない人材となります。

 ですが、もしこのまま彼を切り捨てたら間違いなく恐ろしい脅威となるやもしれません」

「……」

「…ですから、彼に挽回のチャンスを与えるべきだと考えました。…彼が無事にチャンスをモノに出来れば、それは脅威の芽を摘む事にもなるでしょうから」

「…本当に、貴方は賢い人なのね」

「…っ!あ、ありがとうございます」

「…ふふ」

『……』

 またしても驚きの表情を浮かべた彼女は、二度目の称賛をした。…それを見た姉上は自慢気にしていたし、セレナ殿下や親衛隊も感心した様子だった。

「-お待たせしましたっ!」

 そんななか、救護の先生が来たのでノワールを任せる。…そして、後の事は他の人達に任せて俺とセレナ殿下は避難場所に向かった-。


 ◯


 -数時間後。俺は、メイドと共に学園のとある場所に居た。…しかも、そこには学園の関係者のみならず二人の王女や親衛隊、更には目を覚ましたノワールも同席していた。

 まあ、要するに先程のトラブルの原因究明の場という事だ。…当然ながら、ノワールの顔はヤバいくらい緊張していた。

 だが、まずは事態の解決に尽力した俺達への褒美が先のようで、姉上以外の親衛隊の人達それぞれ希望を出していた。

 そして姉上の番となるが、そこで彼女はノワールの罪を軽くする事を望んだ。…しかもそれを叶えて貰う為に、今回の功績を無しにしても良いとまで言った。

 これには、関係者達と当事者でも驚きを隠せないがここで終わりではない。…そう。俺と二人の王女も、姉上に続いたのだ。


 しかもその時、第2王女は彼の功績と先程俺が語った『助けるメリット』を、関係者達に説明してくれた。…それを聞いた関係者は納得していたし、当の本人は恐縮していた。

 そういう訳で、学園側は彼の罪をとても軽い物にしてくれた上に、家への通達に細心の注意を払う事を約束した。

 それを聞いて、ようやくノワールはホッと胸を撫で下ろした。…それにしても、まさか姉上のみならず二人の王女が協力してくれるとは思わなかった。


 その後は、改めて俺達受験生組に合否が告げられる事となる。…まあ、当然俺と王女は文句無しに合格だ。オマケに、『Sランク』のクラスに入る事もその場で言われた。

 そして、勿論ノワールも『特別』に合格が言い渡された。…ただしクラスは一番下のCランククラスとなるうえに、罰による『課題』を終わらせるまではランクアップは出来ない。

 だが、本人は合格を貰えた事に感謝しやる気を見せていた。…これなら、意外と早くクラスメイトになれるかもしれない。

 それが終わると、そのまま学生寮に向かうのだが予想通りノワールは違う方向だった。なので翌日の再会を期待して、俺と女性達はSクラス専用の寮に向かうのだった-。

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2026年1月13日 13:00
2026年1月15日 10:00
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NO追放!NO滅亡! 綺羅星昴 @omega23

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