説得-赤との接触-

 -コイツの名はアルフレッド・ノワール。…原作でのコイツのポジションは、ヴィランである第2王女に加担する『はぐれ召還士』だ。

 当然コイツも、第2王女と同じくらいファンから嫌われている。何故なら、コイツも原作主人公の追放劇に加担しているからだ。

 しかもコイツの加担理由は、嬉々として協力した魔術の指南役と違い完全な逆恨みによるものだ。

『-第3王女のせいで、ボクの人生は台無しにされたんだっ!』…これが、未来のコイツが第2王女に協力する時に言うセリフだ。

 元々コイツは、王室主催のパーティーでセレナ殿下を見掛けた事で一目惚れをし、この学園で王女と同じクラスになる為に必死に努力するのだが、残念な事に入試を落ちてしまう。

 なにせ、筆記では運良く近くに居た殿下を盗み見ていたせいでロクに解答出来ず、それを実技で取り返そうとした結果焦ってしまいとんでもないミスをしてしまうのだ。…それが、今起きているトラブルである。


 勿論、トラブル自体はセレナ殿下と最初で最後の味方となる第2王女によって、あっさりと解決する。…だがその後、『元凶』を召還したコイツにはその場で廃嫡からの国外追放が言い渡されるのだ。

 だから、再登場時のコイツには家名がなくオマケに容姿もたった1年で激変している。…そして、コイツも召還したモンスターで不都合な人間を『処理』したり、聖獣の足止め等様々な工作を任されていた。…ちなみにコイツはどんな最期だったのかというと、自分の人生を狂わせたその『元凶』に吸収されるという、なんともつまらないモノだ。


「…あ、あの?」

「…ああ、失礼。

 -単刀直入に言います。貴方が『召還したモンスター』の所まで、案内して下さい」

「…っ!?…な、なんで、それ、を?」

 時間もないので、早速本題に入る。…すると彼は、余計に冷や汗を流した。…そう。このトラブルは、コイツが召還したとある特殊なモンスターが引き起こしているのだ。

「…だって、ノワール子爵家といえば代々高名な召還士を輩出してきた名門ではないですか」

「……あ」

「そして、確か現在の当主は特殊なモンスターを召還する事に長けていた筈ですよね?…その才能を、貴方は受け継いでいるのでは?」

「……は、はい。…あ、あのっ!」

「…ああ、大丈夫。

 私は、貴方のミスが『故意』ではないと信じています。…そして、貴方がこの騒動の解決を『手伝って』くれるのならば、弁護する事を約束しましょう」

「…っ!ほ、本当ですか?」

 すると、彼は直ぐに食い付いた。…まあ、正直コイツを助けるのは自分の為でもあるし、なにより今のコイツはまだ助ける価値がある。


「ええ。我が家名に誓って」

「…わ、分かりました。……-」

 そう言うと、ソイツは現場の奥を見た。…そこには大きめのテントがあるのだが、中からモンスターが出て来ていた。

「…あそこですね?」

「…は、はいっ!…い、行きますっ!」

「お願いします。

 -ボルトスフィアッ!」

 確認するとソイツは頷いた後、意を決して走り出した。なので、俺も続きつつ上に向けて玉を放つ。

「エレキノイズッ!」

『-ギャウウウウウッ!?』

『ひいいいいいっ!?』

『今度は何っ!?』

 更に、中に入れて置いた初級のスタン技を解放した。直後、現場に落雷の音が響き渡りモンスターはおろか受験生も怯んでしまう。


「…っ!元凶は7のテントですっ!」

「……っ!」

 けれど、姉上は直ぐに意図を察し周りに指示を出した。すると、あらかたモンスターを片付けたセレナ殿下が真っ先に動いた。

「-…うわっ!?」

「ボルトバレットッ!」

『ギュオオオオオッ!?』

 そして、俺達は一足先にテントに到着するがタイミング悪くモンスターが出て来る。なので俺は、素早くそれを処理した。

「…す、凄い」

「どうも。……っ!」

 その勢いのままテントに入ると、中には豪華な装飾の『鏡』が置いてあった。…勿論、それはただの鏡ではない。

「…『ドッペルミラー』ですか」

「…は、はい」

 俺は、少し面倒な雰囲気を纒いながらそのモンスターの名前を口にした。…コイツこそが、この騒動の元凶だ。


「-此処ね」

「「…っ!」」

 様子を伺うフリをしていると、後ろから冷たい印象を受ける声が聞こえた。…当然、俺達は後ろを振り向く。

「…あら?貴方は確か-」

「…っ!?いけないっ!ソイツは、一度に沢山の数を出せるですっ!」

 だが、その時モンスターの鏡の部分が怪しく光る。それを見たノワールは、遅過ぎる警告を出した。

『グギャアアアアッ!』

『ビャアアアアアアッ!』

『ビュルルルルッ!』

「…へえ?こんなモンスターも居るのね」

 直後、鏡から大量のコピーが出て来るが王女は興味深そうに元凶を観察する。…まあ、どれだけ数が多かろうとこの人の敵にはなりえないだろう。


「…とりあえず、広い所に『移動』させないといけないわね。

『-フュージョンマジック・テレポーテーション』」

「「…っ!?」」

 そして、観察を終えた王女はそんな事を言った後、とんでもない魔法の名前を口にした。…すると、元凶とコピー達は瞬時にテントから消えまてしまう。

『-グギャアアアアアッ!?』

 だが、数秒後に外から何かが派手に壊れる音とモンスター達の悲鳴が聞こえた。…本当、敵に容赦がないな、

「あら?結構な高さから落としたのに、まだ消えてないのね」

「……」

「…恐らく、コピー達がクッションになった事でギリギリ耐えたのでしょう」

 さらりと恐ろしい事を言う彼女に、ノワールの奴は言葉を失う。一方、『慣れている』俺は冷静に意見を口にした。


「…ああ、なるほど。

 …うん。やはり彼女の話通りとても賢いようね」

「…っ!恐縮です、第2王女殿下」

 なんと、王女は俺の事を褒めたのだ。その事に、内心驚くとともに歓喜する。つまりこの時点で、王女からの評価はそこそこ高いという事だ。…これは、かなり幸先が良い。

「…では、知恵を貸しなさい」

「……っ」

 更に、王女は少し期待した目でそんな事を命令してきた。…もし、その期待に応える事が出来れば評価はますます上がり、逆に応えられなければその時点で『アウト』だ。

「…1つ、迅速に解決する術があります」

「…聞かせなさい」

「こちらの彼に、騒動の原因となっているモンスターを『送還』をさせるのです」

「…うえっ!?」

「……」

 解決策を告げると、ノワールは驚愕した様子でこちらを見た。…そんなヤツに、王女は凍てつくような視線を向ける。

 間違いなく、今の会話で王女は『真相』に気付いてしまっただろう。…まあ、どのみち後で判明するのだから今話しても問題はない。


「……っ」

「…殿下。確かに彼は、大切な場で重大なミスを犯しました。その結果、このような事態が起きてしまったのですから殿下がお怒りになるのも当然です。」

 -ですが、彼は決して『故意』にミスした訳ではない。…そうですよね?」

「…っ!も、勿論ですっ!」

「……」

 話を振ると、ノワールは激しく頷いた。…すると、少しだけテント内の寒さが和らいだ気がした。

「…ですから、どうか『挽回』のチャンスを彼にお与えになって下さい。お願い致します」

「…じ、自分からもお願いいたしますっ!」

「…っ!…頭を上げなさい」

 真剣にそして深く頭を下げると、王女は少し驚きつつそう言った。…なので、俺達は頭を上げる。

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