第14話 ミイラ男

 その瞬間、ミイラ男に横から体当たりし、その首に水間さんが 念珠ねんじゅを巻き付けて、ねじり上げた。ぼくをかばうように立った哀名は、ミイラ男の体に手で護符を貼り付けている。するとミイラ男が少しして、ガクリと力を抜き、床に座り込んだ。


 はぁはぁとぼくが生きをしていると、二人がぼくを見た。


「大丈夫か!?」

「楠谷くん、大丈夫!?」

「うん、へ、平気だよ」


 二人が助けてくれたからだ。だがそう言おうとしても、まだドキドキしていて言葉が出て来ない。ぼくはふるえたままで、ミイラ男を見る。


「この念珠があって助かった。泰我に借りておいてよかった」


 水間さんはそう言ってから、じっとミイラ男をにらんだ。


「動けないだろう?」

「オオ……オォ……はなセ……」

「聞きたいことがある。話してくれたら、解放する」


 強く言った水間さんは、念珠を引っ張る。すると首に手を当て、ミイラ男が頷いた。


「なんダ?」

「図書室ピエロの所在を知らないか?」

「……あア。最近あいつは、学校の中では、鏡から出られるようになったからっテ、図書室には全然帰ってこなク、なったなア。ピエロがどうかしたのか?」

「……学校内に、ピエロはいるのか?」

「学校内のことハ、人体模型にキくのが、一番だろうガ。違うカ?」

「理科室に行けばいいのか?」

「あいつも走り回ってるかラ、分からない。コレ以上は、オレも知らなイ。ハナせ! 約束だ!!」


 水間さんが悔しそうな顔をして、ミイラ男の首から念珠を外した。するとミイラ男が本に吸い込まれるように消えていった。ぼくの目の前で本がうかびあがり、自動的に閉じると、それは勝手にとんで、本棚に収まった。また誰かが見つけるのを待つのだろうか?


 ぼくがそう考えていると、水間さんがぼくのカタに触れた。


「瑛、それに哀名さん。危ないから、ここで二人は手を引いてくれ」


 真剣な顔をした水間さんを見て、ぼくは首を振る。


「人体模型こそ、学校にいるのに。水間さん一人で、どうやって調べるの?」

「……検討する。場合によっては、泰我に頼む」

「でも……」

「とにかく。危険なんだ。これ以上、二人を危険な目にあわせるわけにはいかない」


 ぼくが言葉に迷っていると、哀名がぼくの腕に触れた。


「楠谷くん、帰りましょう」

「……」


 うつむいたぼくは、なにも言葉がみつからないままで、立ち上がった。




「ねぇ……本当にいいのかな?」


 一緒に歩きながら、ぼくは哀名に聞いた。すると哀名は視線を床にむけた。まつげが長い。かみの毛のリボンがゆれている。


「私だって、お手伝いしたい。でも、迷惑になったらダメよ」

「それは、そうだけど……」

「なにかほかにできることを、探しましょう」

「そうだね」


 うなずいたが、なんとなくむねのところがモヤモヤした。

 二人でならんで、通学路を歩く。哀名のお うちも、ぼくのマンションと同じ方角みたいだ。そうして歩いていると、神社の石段が見えてきた。


「あれー? 本当にデートだったんだ?」


 そこには透くんが立っていた。


「ち、ちがうよ!」

「……だれ?」


 ぼくが大きな声を出すと、哀名がぼくを見た。


「透くん。ここでよく会うんだ。友だちだよ」

「あ、俺のこと友だちだと思ってくれてたんだ、嬉しいよ」

「ちょっとイジワルだから、哀名も気をつけてね」

「……ええ」


 哀名がうなずいたので、ぼくはほっとした。


「イジワルだなんて〝しんがい〟だなぁ。それで? 二人はどこに行ってきたの?」

「学校だよ。図書室」

「ふぅん。お勉強デート? 偉いねぇ」

「だ、だから! デートじゃないよ!」

「照れるな照れるな」


 ぼくは照れくささと透くんに対しておこったせいの二つの理由で、真っ赤になった。

 すると哀名が咳をして見せた。


「私たちがかりにデートをしていたら、あなたに関係があるの?」

「友だちの瑛にカノジョができたら、お祝いしないとね。友だちだから」


 いたずらっぽくそう言って笑うと、透くんが立ち上がり、ぼく達の前に立った。


「遅くなる前に帰るんだよ。亮にいちゃんも心配するだろうしね。またね」


 そして透くんは帰っていった。ぼくがにらむようにして見送っていると、哀名が大きく息をついた。


「個性的な人ね」

「個性的?」

「……変わってるって意味」


 哀名がそう言うと歩きはじめたので、ぼくも一緒に歩いた。




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