第9話 占い結果


 そろって歩きながら、ぼくは何度もとなりを見た。

 哀名はすらりと背が高い。ぼくは負けそうだ。本当に長い髪をしていて、まっすぐでサラサラのつやつやだ。となりを歩いていると、シャンプーのいいにおいがする。


 いつもワンピースを着ていて、哀名はやせている。

 美人だ。

 それに、今は無表情だけど、ぼくに消しゴムを貸してくれたころは、優しく笑っていた。ぼくは笑っているほうが可愛いと思う。それに哀名は、とっても心も優しい気がする。


「どうかした?」


 ぼくが見ているのに気づいたようで、哀名がこちらを見た。

 あわててぼくは前を向く。


「なんでもないよ。行こう!」


 こうしてぼく達は、石段をのぼり、鳥居をくぐった。

 神社には、ブランコと砂場、そしてベンチとテーブルがある。

 ぼく達はやねの下に入って、それぞれ座った。


「はじめます」


 哀名はテーブルの上に布をしくと、その上にカードを並べた。

 トランプみたいなマークを見ながら、ぼくは結果を待つ。

 しばらくすると、哀名がむずかしい顔をした。


「視えない」

「え?」

「図書室ピエロのことが、なにも視えないの。こんなのは、はじめて」

「そっかぁ……」


 ぼくは顔を下げて下を見た。手がかりは見つからなかった。


「もしかすると、トンカラトンのように外にいるのではなく、〝むこうがわ〟にいるのかもしれない」

「むこうがわ?」

「ええ。人間の世界とは違う場所」

「そんな世界があるの?」

「――パパはそう言っていたわ。都市伝説のお化けは、そこから人間の世界に顔を出しているんだって。時々、あちらとこちらが交差したとき、人はお化けに遭遇するんだって」

「そうなんだ」


 ぼくは知らなかったことを、また一つ知った。


「哀名のお父さんは、そういうのに詳しいの?」

「魔術書……幻想文学の翻訳家をしているの」

「そうなんだ。なんだかすごいね」


 ぼくが言うと、哀名が目を丸くしてから、顔を背けた。少しだけ、その耳があかい。照れているみたいだ。


「ねぇ、楠谷くん」

「うん?」

「私も、トンカラトンを調べるの、手伝ってもいい?」

「それは水間さんに聞いてみないと……」

「だったら私が直接お願いするから、合わせてもらえないかしら?」

「会わせるくらいはいいと思う。ええとね、そうしたら次の日曜日の朝十時に、端東第二公園に来られる?」

「ええ、わかった」

「だけど、他の人にはヒミツだよ?」

「約束する」


 哀名が真面目な顔で、大きく頷いた。睫毛が長い。

 ぼくも頷き返して、この日はそれぞれ家に帰った。



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