02_突然の停電 ~ねぇ……私、もうおとなだよ?~

//SE 田舎の自然音(虫の声がちょっと遠くに)



「お邪魔しまーす」//子供っぽく



//SE 玄関で靴を脱ぐ音

   足音(古い家特有の木がきしむ音)



「まさか、おばさんがいないって思わなかったから、びっくりしちゃった」


「あっ、うん、真っ暗になってきたから電気つけるね」



//SE 電気のスイッチを押す音

   引き戸の音(古民家らしい、少し重めの音)



「うわー、懐かしい匂いがする」//感傷的な声で


「昔、ここでよく一緒に宿題してたなぁ。いつも、あなたが私より先に遊びに行こうとするから、私、よく怒ってたっけ」//楽しそうに



//SE 時計の針の音

(針の音が聞こえるくらい静か)



「な、なんか静かだね……」



//SE 風鈴の音



「……外も完全に真っ暗になってきたね」


「子供の頃は、よく『暗くなる前に帰ってきなさい』なんて言われてたよね……」//しみじみ



//SE 風鈴の音



「えっ? 私といると懐かしい気分になるって?」


「そりゃそうだよ、だって、ずっと一緒にいたんだもん」


「この家の思い出だって沢山あるよ」


「縁側でスイカを食べたり、庭にビニールプール出してもらったり……覚えてる?」


「あっ、そうだ。ちょっと向こうの縁側に行ってみない?」



//SE 足音(古い家特有の木がきしむ音)

   衣擦れの音(縁側に一緒に座る)


(縁側で、二人一緒に涼んでいるイメージ)



「あはは、懐かしいー!」


「昔、この広い縁側を二人で雑巾がけしたことあったよね」


「二人で修行僧みたいとか言いながらさ」//笑いながら


「本当にあなたとは色んな思い出があるなぁ」//しみじみと


「昔、泥団子食わされそうになった?」


「残念でした。今は料理くらいできるようになりました」


「え? 私が料理できるのが意外?」


「それは昔の話じゃん。いつまで、子供扱いしてるのよ」



//SE 遠くで小さく雷鳴(ゴロゴロ……)



「えっ、今の音……雷?」


「なんか遠くで鳴ってる? 天気予報、雨だっけ?」



//SE  蛍光灯のチカチカ音



「あ、なんか電気の調子悪くない? うわっ!」



//SE 遠くで雷が落ちる音

   電気が消える音(バチッ)



「……わ、わっ! 停電!? ま、真っ暗……!?」 //慌てて


「な、なんにも見えない……っ」



//SE 風鈴の音(静かに鳴る)



「ねぇ、ちょっと……手、繋いでいい……?」 //心細そうに


「う、うるさいなぁ、私が雷苦手なの知ってるでしょ! 昔は繋いでくれたじゃん!」



//SE 衣擦れの音

(彼女が座っている位置から、あなたの方へ、そっと手を伸ばしてくる)



「ねぇ……どこにいるの……?」//弱々しく


「あ、掴んだ。びっくりしたぁ……」 //安堵



//SE 衣擦れの音

(あなたにそっと身を寄せるような、わずかな衣擦れ)



「ちょ、ちょっと、なに笑ってんのよ!」


「私が昔から変わってないから? そんなことは――」


「……」//小さく息を吐く



//SE 風鈴の音(ゆったり)



「ねぇ……私、もうおとなだよ?」


「おとなになったんだよ……?」


「私ね、この十年間、あなたにずっと言えなかったことがあるの……」


「子供の頃から、ずっと言えなかったことがあるの……」


「それを今日は聞いてほしいな……」


「だから、このまま手、繋いでてもいい?」



//SE 風鈴の音

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