聖剣が勇者に転職しました

上田ミル

第0話 登場人物紹介

 ※主要人物の紹介です。読み飛ばしていただいても大丈夫。第1・2話のネタバレがありますので苦手な方は第1話へGO!


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主人公:聖剣ヴァレンダール

二つ名――勇者殺しの聖剣グラデール・オムシーダ

 剣身は1.2メートルの美しい銀色の両手剣。つばには楡の木を象った繊細なエンブレムが輝き、ただの武器とは思えぬ気高さを湛えている。


 二百年を超える時を生き抜いてきた存在。創造神の手によって鍛え上げられ、選ばれし勇者に仕え、その身に宿る膨大な魔力を分け与え、共に戦う運命を課せられている。そして彼は、人の姿を取ることもできる。


 腰まで届く真っ直ぐで長い銀髪は、銀を溶かして紡いだかのように艶やかで、銀灰色の瞳は静かな湖面のように深く、どこか哀しみを秘めた美青年の姿――まさに、物語の絵巻から抜け出たような完璧な美貌を誇る。本来であれば剣の姿で勇者の傍らに控え、戦場を駆けるはずだった。


 だが、今度仕えることとなった三人目の勇者――カレン(その魂の名は凛香りんか)は、異世界・日本から転移してきた少女だった。

 言葉も文化も異なるこの世界で、勇者が迷子にならぬよう、ヴァレンダールは自ら人型を選び、導き手としてその側に立つことを決めた。


 これまで仕えた二人の勇者は、いずれも壮絶な戦いの果てに災厄級の魔獣を討ち取り、名声を極めた。だが、頂点に立ったその後――彼らは人の道を外れ、欲望と残虐性に塗れた存在へと堕ちていった。


 ヴァレンダールは、誰にも知られぬまま、自らの手でその二人を密かに葬った。その記憶が、彼の心に深い棘となって刺さっている。

「自分は失敗作なのだ」と、聖剣は静かに思い込んでいる。

だからこそ、今度の勇者カレンに対しては、特別な決意を抱いていた。


――もし、カレンがいつか堕ちる日が来るなら。その時は、共に朽ち果てよう。

 聖剣ヴァレンダールは、そう心に誓っていた。



 ヒロイン1:九条凛香くじょうりんか 十七歳

 漆黒の長い髪が優雅に揺れる、美しい少女。彼女は現代日本で、大手企業・九条グループの会長の一人娘として生まれながらも、残酷な運命に翻弄された存在だった。

 愛する父親は謎めいた事故で命を落とし、母親は病に倒れ、そして後妻として現れた義母とその連れ子である義妹によって、会社を奪われ、毒を盛られてこの世を去ったが、異世界へ転生し、ヴァレンダールと出会うことになる。


 生まれたときから心臓に重い病を抱え、ほとんどを豪華な屋敷の室内で過ごしてきた凛香。外の世界を知らず、陽の光を浴びることも少なく、静かに本だけを友として生きてきた日々。そのせいで彼女の仕草はどこまでも控えめで、楚々とした気品に満ちた本物のお嬢様そのものだ。


 しかし、その可憐な外見とは裏腹に、中身はとんでもない。膨大な読書量によって培われた知識は、ファンタジー小説から歴史書、果てはオタク文化の深淵まで及び、頭の中はまさに「知識の宝庫」だった。


 彼女は、心の底から人を信じている。どんなに裏切られ、毒殺されるほどの陰謀に巻き込まれても、それでもなお「人はきっと善いものだ」と信じて疑わない、純粋で優しい性善説の持ち主。


 〇ヒロイン2:カレン・バーラル 十七歳

 ルセリア立憲君主国――ヨト大陸が誇る大国。その辺境にひっそりと佇む小さな村、ベルガー。そこに住む少女、カレン・バーラルは、裕福な両親と優しい兄に囲まれ、何不自由ない日々を送っていた。


 黒く長い髪を風になびかせ、透き通るような白い肌に、深い漆黒の瞳。村人たちからは「まるでお人形さんみたい」と称賛されるほどの美貌の持ち主だ。だが、彼女には誰にも知られてはいけない秘密があった。


 ――彼女は「勇者の卵」。古の伝説に語り継がれる聖剣ヴァレンダールの、未来の真の主となる運命を背負った存在。その証として、彼女には勇者だけが持つ固有スキル「カリスマ」が備わっていた。


 相手の心を自然と惹きつけ、忠誠を誓わせる――まさに英雄に相応しい力。しかし、カレンはその力を、決して正しい道には使わなかった。


「ふふっ、またあの子が生意気なこと言ってたわ。あいつ、ちょっと痛い目にあわせないとわからないみたいね」

 優雅に紅茶を啜りながら、カレンは微笑む。その笑顔は天使のように可憐で、けれど瞳の奥には冷たい光が宿っていた。


 彼女はすでに村の数人の男女を手下にしていた。カリスマの力で心を縛り、忠実に命令に従わせる。気に入らない相手には嫌がらせをさせ、欲しいものは無理やり貢がせる。頭脳明晰で計算高い彼女にとって、それはあまりにも簡単な遊びだった。


「私って、本当に悪い子なのかな? でも……これが一番楽しいんだもの」

 感情が昂ぶるとすぐに顔に出てしまう悪い癖。底意地の悪さが滲み出る毒のある言葉。けれど、それすらも彼女の魅力の一部だと、周囲は誰も逆らえずに思ってしまう。聖剣の未来の主は、今日も村の影で小さく、確実に悪の花を咲かせていた――。

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