06. 黒猫 包囲網
「律、何かすごい視線を感じる」
町のカフェで翡翠がすり寄る仕草をしながら、俺に耳打ちした。
「何……?」
「……感じないの?」
周囲を見たら、店の入口、店内にいる人全員が俺たちを見ていた。
ゾクッ……。
「……ッ」
いつの間にか包囲されている!?
「翡翠……!」
立ち上がった時、一斉に店内にいた一般市民たちが、武器を構えて俺たちを取り囲んだ。
騎士団が一般市民に化けていた? 俺は身バレしているのか??
俺は翡翠をぎゅっと抱き締める。
「どういうつもりだ!?」
「お前を窃盗の疑いで捕縛する!」
「…………!」
室内に10人以上、入口に2人か。普通なら絶対絶命だけど。
俺は剣を抜いて天井向けて一閃し、斬り崩した。取り押さえようとしてきた騎士を数人ぶっ飛ばす。
翡翠を抱えたまま風圧で崩れた瓦礫を駆け上がり、屋根へ逃げた。
「何という身のこなしだ……!」
「魔法使いだと……!?」
風が巻き起こり、騎士たちは目を開けていることが出来ず、口々に追え逃がすなと叫んでいる。
いったいどういうことなんだ? 昨日まで普通に町を歩いていたのに……!
町中にいる騎士の目を掻い潜り、町外れまで逃げてきた。
「何でバレたんだ? 原因がわからないんだけど」
「後で考えよう、今は……」
「あぁ、暗くなるまで待つしか無いな……」
今日は野宿かも……。最悪の場合、この国とはおさらばか。
「……さっきの店、壊しちゃったな、後で弁償しなきゃ」
ちょっとパンは硬いけど、シチューは故郷の味に近くて気に入っていたんだ、悪いことしちゃったな……。
「俺だって、普通に働けたら……、こんな生活してないんだけどな……」
何もかも、余所者を受け入れない体制のこの国が悪いんだ。
元々王宮から離れた場所を拠点にしていた俺たちは、この大陸の果ての方まで来ていた。そうして標高差の高い場所から見下ろしていると、少し先に海が見える。町から海までかなりの距離があり、何らかの移動手段が無いと往き来するには厳しい。
そういえば地形もおかしいな。山が割れてたり、亀裂が入っていたりして、何か海獣でも来て暴れた跡みたいな、不自然な景観に疑問符が浮かぶ。
しばらく考えていたら、崖に挟まれた道で、謎の黒ずくめの覆面集団に狙われている馬車を発見した。
「……目撃したからには、放っておけないよな」
俺は駆け出してその黒ずくめの集団に近づいて行く。
その集団は、妙な首輪を嵌めており、それぞれ鎖が途中で途切れているのに、何処かに繋がっているかのように伸びていて不気味な様子だった。動きも防御の意志がない、斬られても動じないゾンビみたいな戦い方をしている。
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