【2】沙綾 ―「言葉の重さが、いつも怖かった」

私は渡辺沙綾。

人と話すのが嫌いなわけじゃない。ただ、言葉がいつも自分を裏切るだけ。


少し沈黙すると「怒ってる?」

頑張って喋ると「なんか無理してない?」


誰かといると、自分が自分じゃなくなる気がして。

そのたびに、ひとつずつ殻が厚くなっていった。


だけど、

本の中では、私の言葉は私のままでいられた。

誰かの感情に翻弄されず、自分の時間を守れた。


……それでも、時々ページを閉じたときに、胸の奥に静かな穴が開いているのを感じた。


たぶん私は、

“誰かに読まれたい”と思っていたのかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る