第2話 ママ

 現代人は「ママ」を求めている。

 社会が複雑化し、多様なストレスが人々に降りかかる現代、陰鬱とした気分が拭えず、休日は明日を忘れるため、ベッドの上で目を閉じるしかすることがない人は少なくない。また、現代は、良くも悪くも、人と向き合わないことが肯定されるようになり、ストレスを避けて出来る限り1人で過ごすことを選ぶ人も多くなった。ストレスを避けることの弊害として、1人では抱えきれない孤独感に襲われる日でも、誰も自分を支えてくれない、支えてくれる人が居たとしてもどうしても嫌で1人になってしまう、なんてことも多いだろう。だからこそ、無条件に自分を受け入れ、全てを許してくれる「ママ」という存在は、現代人が喉から手が出るほど欲しているものとなっている。ほとんどの人には母親がいるのだから、「ママ」がいるでは無いか、という人もいるだろう。しかし、批判を承知で言うとすれば、「ママ」と「お母さん」は大きく異なる存在である。私たちは、ある一定の年齢で母親の呼び名を「ママ」から「お母さん」に変える。その時点で、母親は自分にとって、全てを預け甘える存在から、相手を1人の人間とし

て理解し、お互いに助け合う一方で、負担を与え合う存在へと変化する。つまり、ただ甘えられる存在ではなくなるのだ。「お母さん」では、現代人の煮詰まったどうしようもない思いをぶつける存在にはなり得ない。現代人は「ママ」を求めているのだ。

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