筆跡
ヤマシタ アキヒロ
筆跡
子供の頃に書いた
日記が出てきた
といっても
自ら進んで
書いたものではなく
学校の宿題として
書かされたもの
面倒くさそうな文字と
どうでもいいエピソード
しかしその筆跡じたいは
間違いなく
自分のものだった
いまと同じ
脳みそで考え
いまと同じ
感性で書いたという
実感があった
考えてみれば
不思議なものだ
あれから何十年も経つのに
私という人格が
連綿とつながって
途切れることなく
つづいている
「手書き」だからこそ
それが分かる
「活字」では
こうはいくまい
とすれば
驚嘆すべきは
われわれの
「手」の持つ能力
手には表情がある
と言われるが
きっと脳との連携が
密なのであろう
握手をすれば
気持ちが伝わる
頬に触れれば
愛情が伝わる
楽器を弾けば
感性が伝わる
筆跡からは
意志が伝わる
遠くない将来
私にいわゆる
恍惚の時が
訪れたら
そのときはぜひ
「手を動かす」ことを
考えよう
手を動かす
ことによって
「脳」を動かしてもらえる
かもしれない
あたかも
心臓に血液を送る
ポンプ装置のように
あたかも
孫に手を引かれる
好々爺のように
(了)
筆跡 ヤマシタ アキヒロ @09063499480
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