神出鬼没

矢沢諭

神出鬼没

とてもきれいなタオルで汗をぬぐうでも笑ってくれるのはあなただけ


足の先までよく洗えという声を無視しつづけて実家に着いた


バッティングセンターを出るのはよそう 母に見守られながら死にたい


さわったら歪むと思っていただけに鏡のまえで立ち尽くすのみ


あれはただの水鉄砲だったし夏をみんなで季節と思いこんでた


父の目に映りたくなる 西日本から徐々に雨雲は降りてく


図書館に響くうがいの音のなかで声がぱちぱちうまれてよかった


「この星で魚について考えることをやめたらどうなるんだろう」


畦道は故郷になくてぜったいはどこにもないから唸るエアコン


とてもきれいなタオルにあなたがなることでようやくみんな笑ってくれた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

神出鬼没 矢沢諭 @ptrn

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

参加中のコンテスト・自主企画