とある児童館の不思議な日常

第1話

「おい、そこの若いの!!お前じゃ…お前……」

 

 騒がしい街の片隅ではっきりと声が聞こえた。雅人は声の主を探し、キョロキョロと辺りを見回すがそれらしい人物はいない。


「こっちじゃ!!こっち!!下を見ろ。」


下を見るとお世辞にも綺麗な格好をしているとは言い難い小柄な老人が一人。


「まったく…近頃の若いのは無駄にデカくていかん…デカイから神経が隅々まで届いておらんのだ……」


「すみません、お爺さん気が付かずに……何か御用ですか?」


ブツクサと文句を言うご老人にいつもの癖で腰をかがめ、目線を合わせて問いかけるが、逆に失礼だったのではないかと思う雅人。

老人はと言うとそこまで気にしていないようで一方的に話し続ける。


「そうじゃ、用がある。お主は運が良いぞ…このワシの難有い御札!!定価1万円のところ千円で売ってやろう!!」


そう言うと着物の袖から汚い字が書かれた御札を取り出す。ん〜……と雅人は困ってしまう。

どうやって断ろうかと考えていると老人が畳み掛けてくる。


「えぇい!!なら百円じゃ!!百円ならいいじゃろ!!」


百円くらいなら募金をしたと考えればいいかと思い、御札と交換する。


「イヒヒヒヒっ…毎度あり」


財布をしまい顔をあげると件の老人の姿はない。

えっ?と思い周りを見渡すがどこにもいない。

しかし、手の中の御札だけが先程の老人の存在を証明していた。

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