本作の舞台は、人工島・東島(イーストランド)と、その東島の住民たちに退去命令を下している本土。生身の身体の一部を機械に置き換える「義体化」の技術が発展している一方で、社会格差が顕著に表れている世界です。
終焉までの期限が切られた舞台で、少女と男は出会います。
機械の腕を持ち、昔の記憶を一切持たない少女・イーリンと、本土の治安維持のために情報を集めている特別捜査官・ミン。
イーリンは、最愛の姉・チュンファを何者かに殺害されたことで、強い怒りと悲しみを抱いています。ミンは、とある犯罪に亡きチュンファが関与していたことから、東島で調査をしていました。
利害の一致からバディを組んだ二人は、チュンファの死の謎を解き明かそうとする中で、新たな殺人事件に遭遇し――まるで居場所を探し求めるように、それぞれの視点で真実を追いかけていくのです。
犯人は、誰なのか。ミンは、どんな背景を持つ人物なのか。イーリンの記憶は、なぜ失われているのか。欠けた思い出の中には、どんな光景が広がっているのか……謎が謎を呼ぶスリリングな展開に魅せられて、夢中になって読み進めました。リーダビリティの高さも素晴らしく、イーリンとミンの立場で東島と本土を行き来する時間が楽しくて、あっという間にラストシーンまでたどり着いていました。
「居場所を奪われる者」と「居場所を奪う者」という決して相容れないはずのイーリンとミンが、少しずつ心を通わせていく過程も見どころです。生きる場所がどこであれ、真心のこもった言葉と行動を重ねれば、対等な関係は築いていけるのだと感じました。それは、二人だけでなく、東島と本土の人たちも同じはずです。
ただ、それを世界中の誰もが認めることは、簡単なようで難しいことなのだろうな、と思いました。たとえ全ての真相が明らかになったとしても、失われた命が戻らないように、本土の在り方が根底から変わるようなことはなくて、社会格差も埋まらず、生きることに付随する痛みや苦しみは、これからも残り続けるかもしれません。
それでも、どんな場所でも逞しく生きていこうとする人々のがむしゃらな姿が、確かな希望になるのだと信じられる……そんな力強さと尊さに満ち溢れたお話でした。
重厚なサイバーパンクSFミステリーの世界へ、皆さまもぜひお越しください。それぞれの居場所で生きる者たちの魂の叫びに、圧倒されること間違いなしです!
鉄と油、濡れたコンクリートの生臭さが漂ってきます。
この作品の凄みは、単なるSFの枠に収まらない「身体的質感」の描写にあります。
物語を貫くのは、執拗なまでの「欠落」のテーマです。
失われた右腕、消えた過去の記憶、そして首を奪われた姉。
これらの欠落が単なる設定に留まらず、登場人物が「自分は何者か」を証明するための痛烈な動機として機能しています。
特筆すべきは、義体化というガジェットの扱い方。
握手した手の熱で生身か否かを判別し、その微かな「温かさ」に信頼の根拠を置く。
テクノロジーを、記号ではなく「触感」として描くセンスは嫉妬案件です。
まだ序盤も序盤を読んだだけなのですが、SFミステリとしての緻密な伏線の影がチラホラと見え、今後どんな風にカタルシスをくれるのか、期待してます!
互いにいけ好かないながらも目的のために仕方なく手を組む正反対の二人、もちろんみんな大好きだと思いますが、本作はまさにそんな男女バディが登場する物語です。
舞台となるのは、違法な義体化手術の蔓延る、スラムのような劣悪環境の人工島。
ある一人の女性の死によって引き合わされるように、少女と男は出会います。
姉・チュンファを殺された義腕の少女・イーリンと、島へ派遣されてきた生身の身体の特別捜査官・ミン。
凄惨な連続殺人事件の裏でキナ臭い陰謀が交錯する、ハードでスリリングなSFミステリ作品です。
冒頭のスタイリッシュなアクションシーンから、一気に物語世界へと引き込まれました。
埃っぽい悪臭や肌にまとわりつく質感の空気まで、リアリティたっぷりに伝わってくる筆致が素晴らしい。
事件の容疑者を追っていく緊迫感と、謎が謎を呼ぶ展開が、読者を先へ先へと誘います。
キーとなるのは『義体化手術』です。
義体に交換した身体は、自分自身と言えるのか。
電脳に記録された感情は、思い出は、思考は、自分のものと言えるのか。
己のアイデンティティや存在意義にもつながる問い。
それはそのまま、どんな手段を使っても生きようとする人々の姿にも重なります。
戦う意味だって、きっとそこにある。
タイトルでもある『イーストランドの終焉』は、はたしてどんな光景なのか。
終わりの先にある始まりの景色に、ぜひ辿り着いてください。
ハードなSFをお求めの方におすすめです!