対峙④
それから2カ月が過ぎたころだろうか。
佑太のもとに一通の手紙が届いた。
差出人の欄には、「白峰湊」とある。
佑太はあれから、書きなぐってきた手紙を拘置所にいる湊に送り続けていた。
なぜそうしたのかは分からない。
自分の想いを知ってほしかったのか、それとも湊への恨みか、あてつけか。
ただ、佑太は書きなぐった手紙をそのままにしておくことはできず、ネットで拘置所への手紙の送り方を調べて、実行していた。
この2カ月間で、送った手紙はゆうに50通は超えていただろう。
内容なんてなかった。
ただ、自分の中に生起した言葉を、思いつくままに端から書き連ねていった。
だから、まさか湊から返事が来るなんてことは思ってもみなかった。
震える手で彼からの手紙を手にしたとき、佑太はどうすればいいのか分からなかった。
自分はこれを読むべきなのだろうか。
読んでしまうと、また、あの頃の彼の言葉にとらわれていた自分に戻ってしまうのではないか。
いや、むしろそうなってしまったほうがいっそ幸せなのかもしれない。
この2カ月の間も、佑太は手紙を書くということ以外、なにもしていない。
元々険悪だった両親との仲は、もはや修復不可能なほどこじれてしまった。
仕事もなければ、気力もない。
もはや、自分には湊への手紙以外、なにも残っていないことに気づいた。
だから、いっそのこと甘い言葉が自分を救ってくれたならとも思う。
佑太はベッドの上に座り、湊からの手紙を見つめたまま動かない。
そのまま数時間が過ぎたころ、ようやく佑太はもう一度手紙を見つめなおして、手に力を入れる。
そして、ゆっくりと便せんの封を破いていった。
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