2 最強の【カウンター】剣士へ


 スキル極振りした究極の【カウンター】。


「うん、完全な俺の趣味だ」


 ニヤリとする俺。


 どうせ死ぬかもしれないなら、せめて自分の気に入った戦法で挑んでみたい。


 カウンターに特化し、相手の攻撃をすべて跳ね返す。


 しかも、反射した攻撃の威力は極振りした【カウンター】によって、とんでもないダメージ数値になる。


 そう、俺に攻撃した時点で敵は終わる。


 言ってしまえば、『敵が攻撃したら必ず勝つ理不尽な強者』になるんだ。


「……よし、決まりだ!」


 俺はスキル一覧を開き、一気に【カウンター】スキルへと振り込んだ。


 すぐに基本スキルの【カウンター】はカンストし、さらにスキルツリーが表示されて、派生のスキル一覧が出現する。


 そこにもポイントを振り込んでいく。


【完全防御】


 物理攻撃を受け流すスキル。防御の瞬間、自動で最適なカウンター姿勢を取る。


 これがあれば、どんな剣撃も無効化できるだろう。


【魔法反射】


 受けた魔法をそのまま敵に跳ね返す。威力減衰なし。


 魔法使い相手でも無敵だ。


【攻撃予測】


 敵の動きを視覚化し、5秒先の攻撃を予測する。


 未来予知系のスキルは強いよな。


【カウンター強化】


 カウンター時の攻撃威力を3倍にする。コンボ発動時はさらに威力上昇。


 反射した攻撃の威力がさらにアップするし、敵の攻撃が強ければ、さらにもっと強く反射できるわけか。敵の自滅を誘えるな。


【神速反応】


 攻撃を受けた瞬間、自動でカウンターを発動する。反応速度は常人の30倍。


 とんでもない反応の速さだ。これならどんな攻撃にだって反応できるだろう。


 スキルポイント9999を消費し、【カウンター】及び派生スキルの大半をカンスト完了。


「あれ? 全部のスキルはカンストできなかったのか」


 もしかして、ゲーム本編より派生スキルの数が多いのか?


 まあ、いいか。


 とりあえず現状で得たスキルだけで、オーバーキルならぬオーバーカウンター気味だからな。


 はっきり言って――【カウンター】に関しては、完全にチートクラスになったと思う。




 ――というわけで、訓練とスキルテストの時間だ。


 さっき俺が居た場所は、王城に続く道だったらしい。


 ジルダはちょうど王立騎士団に出勤する途中だったのだ。


 で、俺はそのまま騎士団の訓練場に行った。


 騎士団の仕事は巡回やモンスター討伐、合同訓練に自主訓練――と色々あるみたいだけど、都合がいいことに、その日は自主訓練だった。


 俺は訓練用の剣を手に取ってみる。


 ぶんっ!


 その瞬間、体が勝手に動いて、自然と【カウンター】の姿勢を取った。


「おお……」


 思わず感嘆する俺。


 何も考えなくても『反射』で【カウンター】を繰り出せる感じだった。


 試しに、訓練用のゴーレムと戦ってみることにした。


「訓練とはいえ、本物の『戦い』なんて初めてだ……」


 緊張する。


 何せ俺の前世は普通のサラリーマンだ。


 もちろん、戦いなんて経験したことがない。


 現代日本でそんなもの、普通は経験しないからな。


 全長2メートルくらいの人型ゴーレムが近づいてくる。


 動きは鈍重だけど、パワーはありそうだった。


 ゴーレムが拳を振り上げ、パンチを繰り出した。


「――!」


 その動きが異常なまでにゆっくり見える。


【神速反応】の効果らしい。


 しかも、赤いエフェクトで5秒後の未来の動きが示されている。


 こっちは【攻撃予測】だな。


 なるほど左から回し込むようにして俺の胸元を狙って来る軌道か。


 俺はやすやすと回り込み、【完全防御】でゴーレムの重いパンチをあっさりと受け流す。


 そのまま【カウンター】発動!




 どごおおおおおんっ!




【カウンター強化】の効果で3倍になった攻撃が、ゴーレムの頭部を一撃で粉砕した。


「す、すごい……すごいぞ」


 どんな攻撃を受けても、自動で最適なカウンターが発動する。


 魔法攻撃も反射する。


 しかも相手の攻撃はめちゃくちゃスローモーションに見えるうえに、未来の軌道まで分かるから簡単に見切ることができる。


 俺に攻撃したら相手は詰むな、これ。


「無敵じゃないか……はは」


 俺は思わず笑いが込み上げた。


 これなら――。


 これなら、勇者ゼオルにだって勝てるかもしれない。


「でも、まだ不安もあるし、もっと訓練しよう」


 俺はさらなる高みを目指して【カウンター】の実戦訓練を続けるのだった。





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