怪語れば怪至る
- ★★★ Excellent!!!
ホラー小説において「セリフのリアルさ」の重要性は私ごときが言うまでもない。創作性、幻想性の強い作風であったとしても、少なくとも登場人物を「作者に操られる説明装置」にするのは好ましくなかろう。何故か? この作品はその答えを短く、明確に示している。
嫌々ながら(無意識の内に)怪異の詳細に迫ってしまう主人公。薄々はおかしいと感じつつ、日常という枠から頑なに出ようとしない母親。どちらのセリフも極めてリアルだ。未知を未知のまま放っておけない、恐怖を直視したくない、どちらも現実の人間の本能に根ざしているが故に。
肯定と否定、どちらもリアルが故に、両者の連奏は怪異の輪郭を生々しく浮き上がらせ、ついには実体化させるに至るのである。作り物感が全くない、リアルな怪異として。
怪語れば怪至る──少し補足。語りがリアルであればある程、現れる怪異もリアルさが増すのである。