第15話 学生っぽい放課後?

「……へぇ、ここが……」

「あっ、ひょっとして初めて? 葉乃はのちゃん」

「あ、うん、まあ……」

「ふむ、そっかそっか。ならば、この私が丁重にお教え進ぜよう。是非とも師匠と呼ぶがいい」

「は、はい師匠!」



 それから、二週間ほど経た放課後のこと。

 そう、ビシッと胸を張り告げる華やかな少女。クラスの明るいムードメーカー、水谷みずたにさんだ。はい、頼りにしてます師匠! 


 さて、今いるのはこの辺りに一つだけあるボーリング場。そこに、あたし達を含む16人――なんと、クラスメイトみんなが集まっているわけで。





『――ねえ、葉乃ちゃん。突然だけど、今日みんなで遊びにいかない?』

『…………へっ?』



 一時間ほど前のこと。

 ホームルームを終え帰り支度をしていると、ふと前の席からそう問い掛ける水谷さん。話を聞くに、なんとあたしの歓迎会を兼ねてボーリングに行かないか、とのお誘いで。そんな、勿体なく申し訳なくも何ともありがたいご提案に――


『――うん、行く! もちろん行くよ!』


 そう、前のめりに快諾するあたし。だって……こんなの、初めてだし。クラスのみんなと一緒に、なんて……こんな学生っぽい放課後、大袈裟じゃなく人生で初めてだから。





「……へぇ、上手いね葉乃ちゃん」

「……そ、そうかな?」



 時は戻り、ボーリング場にて。

 そう、ポカンとした表情で褒めてくれる水谷さん。他の生徒達も、似たような表情を浮かべていて。と言うのも、自分でもびっくりなんだけど、一投目からなんとストライクで……まあ、流石にマグレだと思うけど。



「ところでさ、ほんと先生も来れたら良かっ……あっ、別に奢ってもらおうとか思ってないよ? ただ、一緒に遊べたら良かったなぁって」

「ふふっ、分かってるよ水谷さん」



 すると、他の子の投球を見ながらポツリと呟く水谷さん。……あっ、師匠っていうの忘れてた。

 ともあれ、彼女はこの会に先生――宵渡よいとさんも誘ったとのこと。でも、業務が残っているとの理由で断られてしまったとのことで。……まあ、忙しいだろうしね、先生って。



「――さてさて、次は私だね。師匠の実力、とくとご覧あれ!」

「はい、期待してます師匠!」


 その後、ほどなくすっと立ち上がりそう言い放つ水谷さん。はい、バッチリ見させていただきます師匠!




「…………すごい」

「まあ、これでも師匠だしね。弟子がストライク出した手前、カッコ悪い姿は見せらんないでしょ!」



 それから、ほどなくして。

 そう、ビシッとVサインをしつつ晴れやかな笑顔で告げる華麗な少女。そんな彼女の結果は、ストライク――それも、あたしとは違い何とも華麗なフォームでの……うん、もしかしてプロ?



 その後も、和気藹々とボーリングに興じたあたし達。結局、あたしは最初のあれだけでそれ以降はストライクはなく。うん、やっぱりあれは偶然――いわゆる、ビギナーズラックというやつなのだろう。まあ、もちろん全然いいんだけどね。そんなことより、みんなとこうして楽しい時間を共有できてることがほんとにありがたく嬉しいわけで。






 

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