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「免許取ったんです。」

そう言って、車を出してくださった。

助手席に乗るのは緊張しました。

車の中でもお話ができました。

車窓から見える景色の話。

通っていた学校の話。

学校の先生の話。

どれも楽しいものでした。

駅についてしまうのが惜しい気持ちでした。


「気をつけて帰ってください。」

そう言って、女史は私にハグをしてきました。

あまりにも突然の出来事で、心臓が5秒ぐらい止まりました。

あまい香りがしました。

からだが硬直してしばらく動けませんでした。


それから女史は私の手を取り、両手で握り、今日は来てくれてうれしかったです。

また来てください。とおっしゃり、微笑みかけてくださいました。


すべてが夢のようでした。


会社では1年後輩でしたが、もう会社を辞められているのですから、先輩も後輩もありません。

私にとっては、永遠の天使のような存在です。

その方と、ふたりきりの時間。

そしてハグ。

私はなんて幸せ者なのでしょうか。

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