【後日談】モキュメンタリー書いたら怖い目に遭った。

深川我無

魔を語れば、魔来たる。

長らく敬遠していたモキュメンタリーを、この度お誘い頂いた自主企画に寄せて書きました。


作品名は『【至急】対処法を教えて下さい』

https://kakuyomu.jp/works/16818792435577114824


自主企画は小野塚 様の【🎐納涼怪談会🎐】

https://kakuyomu.jp/user_events/16818622177577028322


実際書いてみると、読者の方々のコメントが盛り上がって、リアルタイムで一緒に作品を作り上げるような一体感が心地良く「モキュメンタリー全盛期に書いておけば良かったなあ」なんて思ったりしました。


ですが、そんなことを思いながらも、私の胸の中では何かが引っかかり続けていました。


それこそがモキュメンタリーを書かなかった所以でもあります。


魔を語れば、魔来たる。


誰が言ったかそんな言葉があります。


ですがホラー書きの私自身、ここまでホラーを書いてきてそういう目に遭ったことはありませんでした。


「小説は例外なのかもしれない」


いいえ違います。


私が書いてきたジャンルやテーマが、この世界とは違う世界線の物語だったからです。


現代の一側面を切り取った、地続きの物語の場合、チャンネルが重なる可能性はおおいにあるわけです。


だからモキュメンタリー、書いて来なかったんですね。


それに、リアルを追求する上で架空とはいえ陰惨な事件や事故を描いてしまうと、それと全く同じ悲劇が起こっていて、誰かの心を酷く傷付けるかもしれません。


そういうのもあって、寓話的、あるいは違う世界線の話を描くことが多かったのですが「ホラーファンに刺さる作品を」というのが、個人的な今年のテーマだったりして、モキュメンタリーを解禁するに至りました。


それで書いたら、やっぱり楽しいんですね。


読者の方が楽しんでくれているのも感じられてなおさらに嬉しい。


そんな気持ちで私は眠りにつきました。


その夜です。


隣で寝ている妻が何度もうなされています。


その度に揺すって起こすと「怖い夢を見た」「金縛りにあった」とうわ言のように呟いてまた眠ってしまいます。


しばらく起きていたのですが、妻の寝姿が安定してきたので、私も眠ることにしました。


時刻は夜中の2時ごろでした。


「起きて! 起きて!」


突然の妻の叫び声で私は飛び起きました。


心配そうな妻が私を何度も揺すっています。


「どうしたの?」


そう尋ねた私は自身が汗でびしょ濡れになっているのに気が付きました。


「凄くうなされてたの。それで起こそうと思って見たら、横で寝ていた人、あなたじゃなかったの……」


血の気が引きました。


私自身は悪夢なども無く、もっと恐ろしいことにまさしく「死んだように」眠っていました。


けれど、身体は尋常ではない量の汗を垂らし、うなされて叫んでいたと言うのです。


「だからモキュメンタリーは書きたくなかったんだよ……」


ちなみに、妻にはモキュメンタリーの内容はもちろん、書いたことすら話していません。


なので「魔を語れば、魔来たる」という無意識の暗示も無いはずです。


暗示があるはずの当の本人は死人のように眠っている始末。


妻が起こしてくれなかったら、私はどうなっていたのでしょうか……?


何かが私に取り憑いていたのでしょうか、


考えたくありません。


皆様も現代と地続きに魔を語る際は、ご用心を。




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