嘘みたいな本当の話
クライングフリーマン
嘘みたいな本当の話
『サラリーマン警官』と『でない方警官』
まずは、『でない方警官』の話。
養成所に入所して、暫く経ってからの『発表会』の演目の一つに、私も出演することになった。はっきりとしたコースがある訳ではないが、『演出部』と『演技部』があった。
『演出部』は私を入れて2人、他は『演技部』だった。
私が代表になったのは、最年長に加えて、京都の劇団での俳優経験者だったから。
卒業公演は出演しなかったが、『中間発表会』には私達演出部も出演した。
観客も呼べと言われたので、従弟に連絡して来て貰った。
それで、その演目の『ガラスの動物園』という作品で、皮肉にも私が『演出部』として選んだ作品だった。
私は、『中間発表会』の主催者兼審査員のメイン演出家講師3人の演出助手をやらされていた。
言い訳すると、時間が無かった。
一応、『速読』し、「エイヤっ!!」と上演範囲を決めた。
適当な割りには、その範囲を所長もメイン演出家の先生も褒めてくれた。
後で熟読したが、キーポイントになるシーンだった。
さて、狭い四畳のアパートでは、とても暗記したり稽古出来ない。
誤解のないように申し添えるが、断じて「四畳半」の誤字ではない。
大家の都合で建てた変形アパート間借りだった。だから、安かった。
これも、誤解のないように申し添えるが、半世紀近く前の建物で、当時は建築基準法違反ではなかった。
アパートから少し離れた小さな公園で練習していると、お巡りさんが来た。
「すみません、うるさかったですか?」私は一応事情を説明した。
「いや。どうぞ続けて下さい。」
5分位見学して、お巡りさんは「頑張って下さい。」と言い、敬礼して去って行った。
で、『サラリーマン警官』の方の話。
養成所をクビになった私は、養成所の先輩の紹介で、ある児童劇団の裏方のバイトをしていた。
夜中に出発で、集合場所が交番の前にも拘わらず、『サラリーマン警官』2人がやってきた。
不味いかな?と思い顔を伏せたのが不味かった。
『例のやつ』をやられた。『職務質問』だ。
大道具のアルバイトをしていて、夜中に出発で、交番前で待ち合わせだと言っても、なかなか開放してくれない。
身分証替わりの運転免許証の番号を無線で報告し、報告終わりに「遅刻しそうなんですけど」と言ったら、「規則ですので。お時間取らせて申し訳ありません。」と渋々言い、敬礼して去って行った。
交番前に到着し、先輩に事情を説明したが、遅刻を怒っていた。
児童劇団の先生は、何も言わず、ちゃんと給料も貰った。
不愉快な気分は、バイトが終ってからも続いた。
僅か数年の違い、僅か1キロ程の距離の違いだった。
先の『お巡りさん』は珍しいタイプなのかな?『当たり外れ』かな?と何十年も思った。
今日、『駐在さん』が来た。
年度替わりには必ず、「調査」に来るが、今日は「ご機嫌伺い」?
一人暮らしだから、いつ「不審死」するか「自然死」するか分からないからね。
自転車なのに、『ねずみ取り』されたことが数回ある。
でも、落とし物を届けたこともあるし、隣家が空き家だった時代にヤンキーが出入りしようとしていたのを通報したこともある。
ケータイには、ちゃんと警察署の電話番号が記録してある。
―完―
嘘みたいな本当の話 クライングフリーマン @dansan01
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