第6話

 昔、ぼくが汚いクソガキだった頃、遊園地の着ぐるみを蹴り倒した。

 着ぐるみはあっけなく倒れ、取れた頭の下からはおじいちゃんかおばあちゃんかもわからない年寄りが出てきたのを見た。

 ぼくが覚えているのはその瞬間まで。

 気が付けばぼくはその着ぐるみを着て、道行く子供たちに風船を配り続けていた。風船を配る以外の動きはできず、手の中の風船は補充もないのに無くならないし、夜になっても朝になっても子供たちはいなくならなかった。

 何十年か経ったある時、昔のぼくみたいなニチャニチャしたガキがぼくを蹴り飛ばした。地面に倒れてやっと外れた頭の下、自分の首の骨が折れる音が聞こえた。

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