【40,000PV突破御礼】古医術で診療所やってたら医術ギルドに潰されそうになり、闇バイト先が魔王軍で魔族たちに溺愛されてます(R15)
第51話 配送係に薬湯をぶっかけられて風呂に入ったら、全裸に“いい身体”って言われました
第51話 配送係に薬湯をぶっかけられて風呂に入ったら、全裸に“いい身体”って言われました
夜更け。
診療所の灯りは、まだ消えていなかった。
俺は机に向かい、古びた術理書を睨んでいた。どうしても、“双環式第三配置”の構築理論がわからない。
「……ちっ」
本の隣に置いた紙にメモを取っては消し、また首を捻る。
もう何度となく繰り返している。紙も積みあがっている。なのに、偏位環と内包式との関係性がどうにも腑に落ちない。
“構築式”とは、魔力を安定的に循環させるための術的骨格だ。基本的には、魔力を取り込む「流入点」、制御する「制御環」、そして結果を出す「出力核」の三つの要素でできている。 その周囲に「共鳴層」や「封止結界」といった補助的な術式が重ねられ、全体でひとつの働きをなす。
今回必要なのは、“魂を通して魔力を誘導する”タイプ──いわゆる“魂導型”だ。 人の魂の残滓や記憶に干渉しながら、術を完成させる高等技術。そのため、構築式にも精密な“位相調整”が求められる。
そして、その中核を成すのが──“双環式第三配置”。
俺は額を押さえる。 一見シンプルだが、偏位環の位相がわずかにズレるだけで、術式全体のバランスが崩壊する。……まさに今、そのズレをどう収束させるかで行き詰まっていた。
──そのとき。
「セレンさんっ……」
やたらと不安定な足取りとともに、アルターが湯気の立つ器を運んできた。
「薬湯、いれたのでっ……夜遅くまで作業、お疲れさまで、あのっ、よかったら飲んでくださ──きゃあっ!?」
ズルッ
「おい!──って、熱っ!!」
薬湯が盛大に俺の脚にこぼれた。
「うそっ、ごめんなさいごめんなさいっっ……!!!」
慌てて布で拭こうとするアルター。 だが、その手は震えていて、逆に熱を押し広げるだけだ。
「いや、大丈夫。風呂、行ってくる!」
「はいぃ……ご、ごめんなさい……っ」
***
風呂場に入り、脚を水で冷やしていると、後ろから声がした。
「あの、拭く物を……」
「ッ……おま、なぜ入ってきた」
「あ、あのっ……拭くものをお忘れてでしたので……!」
慌ててバスタオルで顔を覆うアルター。 それでも、ちらりと視線が動いた。
頬が、わずかに染まっている。伏し目がちに、長いまつ毛が揺れた。
唇がちょっとだけ開いて、何か言いかけて──
「えと……セレンさん、けっこう……」
小さな声で、ぽつりと呟く。
「いい……身体、してるんですね……」
耳まで真っ赤になり、「ち、ちが……そういう意味じゃ」と口ごもったまま、バスタオルで顔を覆う。でも、指の隙間から、ちらちらとこっちを見ていた。
……やめろ、そんな顔で、そんなこと言うな。
てか、そういう意味ってなんだよ。
こっちは全裸だぞ。
しかもその視線、照れてるようでどこか真剣で、なんかこう、余計に困る。
何なんだこの雰囲気。
風呂だぞ?
理性の砦、風呂だぞ?
「ち、違います、そういう意味じゃ──いや、ちょっとはあるかもですけど……」
「……出てけ」
「で、でも! 脚、ちゃんと冷やさないと火照りが残っちゃうから……っ」
俺はタオルをきつく巻き直しながら、深く息を吐いた。
「自分でやるからいい……とにかく、風呂は俺の聖域だ。悪いけど、出てってくれ」
「は、はいぃ……」
しゅん、と肩を落とし、アルターはくるりと背を向けた。小さな足音が遠ざかっていく。
……やれやれ。
ようやく静けさが戻った浴場で、俺はもう一度、脚に水をかける。
さっきの言葉が、耳の奥に残っていた。
(……いい身体、か)
無自覚に言ったのか、狙って言ったのか。
どちらにせよ、あの顔で言われたら──どうしたって意識してしまうだろ。
地味な服や三つ編みとは不釣り合いな、見目麗しい顔立ち。
くりくりと大きな瞳と、小ぶりでふっくらとしたピンク色の口元。
湯気越しに揺れる濡れ髪と、火照った頬に貼りついた前髪に縁取られて──
……なんか妙に色っぽかったな。
(なんなんだ、あいつ……)
(てか、本当にスパイなのか?)
──まぁ、もう少し様子を見るか。
そう判断しながら、俺は風呂を後にした。
***
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