【40,000PV突破御礼】古医術で診療所やってたら医術ギルドに潰されそうになり、闇バイト先が魔王軍で魔族たちに溺愛されてます(R15)
第50話 頬を撫でる指と押しつけられる胸。仲間たちは旅立った──俺は間に合うのか?
第50話 頬を撫でる指と押しつけられる胸。仲間たちは旅立った──俺は間に合うのか?
扉を開けた瞬間──
「はわわっ!?」
小さな悲鳴とともに、茶色い三つ編みの影が俺の胸にぶつかり、薬草の束ごと転がり込んできた。
「いった……」
「……お前は」
思わず手を伸ばして助け起こすと、少女はふらりと立ち上がりながら、こちらを見上げた。地味な服装に似つかわしくない、くりくりとした瞳と、ぽってりした桃色の唇──
紛れもなく、薬草配送係のアルターだった。
「落ち着け、深呼吸しろ」
膝に抱えた薬草束は、丁寧に括られていて崩れた様子もない。
仕事への誠実さだけは、相変わらずだ。
「まったく……こんな早朝にどうした。てか、配送は昨日じゃなかったか?」
「す、すみませんっ……っ! あの、途中で寝ちゃって……ふもとの小屋で朝日を待ってたら、また寝過ごして、それで……!」
ドジっ子にもほどがある。
よくこの仕事が務まってるな。
いや、ほんと、大丈夫か?
***
アルターは、例によってまた擦り傷だらけで、エリシアが診察室で手当をしていた。俺たちは、少し離れた部屋に集まり、今後の動きを確認していた。
「……タイミング良すぎて、スパイかと思ったぜ」
ヴェレムがそっと言葉をかぶせる。
「──まだ、違うと決まったわけではありません」
その言葉に、俺はもう一度アルターをまじまじと見つめる。
このドジっ子がスパイ?
いやいや、そんなわけ──……
いや、待て。
妙に古医術に詳しいのは、偶然じゃないかもしれない。
(……まさかな)
頭を振って、俺は椅子に座り直す。
「まあいい、とりあえず役割は分担通りだ。
ヴェレムは魔王城へ。アスリナは戦団の再編。ラナは潜入。……問題ないな?」
「うむ、セレン、目を離すのは心配だが……気をつけるのだぞ。
アスリナが真っ直ぐにこちらを見つめてくる。
いつもの凛とした眼差しに、かすかな揺らぎ。
頬に赤みが差し、言葉の続きを口にすることなく、唇がわずかに震えた。
不器用なやつだ。
でも、気持ちはちゃんと伝わってくる。
(……ほんと、可愛いな、こいつ)
不意に胸の奥がじんと温かくなり、自分で少し驚いた。
そこへ、ラナがにっこりと笑って手を振った。
「せんせぇ、あたしがいない間、浮気したらだめだよ♡」
にこっと笑って、ラナが俺の腕にしがみついてくる。
ぐいっと体を寄せてくるから──
豊かな胸が、無遠慮に俺の肩や腕に押しつけられる。
柔らかすぎて、なんかこう、いろいろと無理がある。
やめろ、美味いもの食ったような顔すんな。
「ラナ、がんばるから♡でもね……せんせぇがよそ見したら、ラナ、泣いちゃうからね?」
甘えた声が耳元にそっと囁かれ、ぞわりと背筋が粟立つ。
物理的にも精神的にも近すぎる。
「ふふ……寂しくなりますね。早く戻って、また“可愛がって”あげますから」
ヴェレムが俺の頬を撫で、含み笑いを浮かべた。
そういう誤解を招く言葉はやめてほしい──……のに、妙に胸がざわつく。
ともあれ、俺は三人を見送った。
窓の外に小さくなっていく背中を見送りながら、肩の力を抜く。
……まったく、なんだか面倒な連中だ。
でも、誰かが転んだら、誰かがすぐに手を伸ばして。
誰かが拗ねたら、誰かが必ず気づいて──
そんなふうに、何だかんだで支え合ってる。
騒がしくて、遠慮がなくて、時に振り回されることもあるけれど。
──それでも、俺には、なくてはならない。
どうか、無事で帰ってきてくれ。
俺の大事な、仲間たち。
***
──そして夜。
結局、アルターは診療所の片隅でうたた寝していた。
エリシアは診療録を書いている。
俺は魔力を操る術式を作るため、『王立古医術典籍 第十三巻・術理篇』をぱらぱらとめくっていた。
だが、治療と術式構築とでは勝手が違いすぎる。
いくら読み込んでも、まるで歯が立たない。
指先に残る紙のざらつきが、やけに冷たく感じられた。
残り時間は13日。
──本当に間に合うのか?
***
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